【北信介】５日間の料理教室。

＊ 理由は。 ページ11

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２週間前。


自分は、Aさんに対して恋愛感情を抱いている。


そう自覚したのがその頃やった。




自覚したのがその頃やっただけで、たぶんもっと前からきっとそうやったんやろうと思う。


自覚してからは、以前よりも彼女を目で追うことが多くなった。




いつも明るく振る舞う彼女。


…それでも、ふとしたときに見せる疲れたような顔が、少し気がかりだった。









数日経って、Aさんが居らん間に 俺はおばさんに最近のAさんについて何か知らないか、と訊いてみた。


俺の問いに驚いたように顔を上げたおばさんは、少し眉をひそめて答えてくれた。









「…最近ね、調理師免許を取るために勉強を始めたらしいのよ」


「調理師免許、ですか」









元々学生時代から、Aさんは調理師免許を取りたがっていたという。


いずれはこの店を自分が継ぐことになったとき 必要だからと、高校卒業後 専門学校へ通う予定やったらしい。


しかし高校卒業間近、彼女のお父さんは病気のために他界してしまい Aさんはおばさんを支えるため、進学を諦め すぐにこの店で働き始めた。




調理師免許を取るためには2年間の実務経験を積み、試験に合格しなければならない。


19歳からこの店で働いている彼女は、あとは試験を合格するだけ。


そのために１ヶ月程前から、独学で試験対策を始めたのだという。









「…最近ね、あまり寝てないみたいなの。もう少しで試験だからって、店閉めて仕込みが終わったら 夕飯も食べずに部屋にこもっちゃって」









このままやと いずれAさんは体調を崩してしまう。


おばさんが注意しても空返事しか返ってこないという彼女に、なんとかしてちゃんとした食事を摂って貰えないやろか。




そこで思い付いたのが、「無理にでも夕飯を作って食べてもらうこと」やった。









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