郵便局員の意地【文スト】 (ページ2)

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葉書一枚ページ2

食パンを咥えてつま先に靴を引っかけ、今日も私は走り出す。

胸にあるのはただ一つ、遅刻してしまう！という事だけである。

海堂A、毎朝同じように遅刻しそうになって走る、少しずぼらで、それでも懸命に平和に生きる郵便局員だった。

　其れが、如何してこうなった。

「いっけなーい☆ﾀﾋ亡しちゃうーっ！？」

ああそうだった、と平和ボケした頭で思い出すのは引っ越して直ぐに大家さんから云われたこと。

家をでて３本目の裏路地を通ってはいけないのだった。

其処には柄の悪いオッチャン―――確か、ヨコハマを牛耳るマフィアとやら―――が居るんだった。

　そして奴らは今日に限って、職務を全うしており、つまりは人をブッコロリしていた。
いつもは煙草吸ってたり駄弁ってたりするのに！今日に限って！ブロッコリーしてんじゃねえよ！！
何で今日なんだよ！！スキンヘッドのくせに！

ハーゲ！！
　
　そういう訳で私は非常に運の悪い事に、殺人事件の目撃者になってしまった訳で。
　当然犯人は証拠隠滅を図ろうとする訳で。

「って現実逃避してる場合じゃなかったあぁあ痛い！！？足痛い！！！何此れ銃！？一般人に銃向けるとか何事！？お母さんどころか私泣くよ！！？」

て云うかかもう泣いてるよ！

　チラリ、と腕時計を覗き込む。・・・8:58と把握。本来なら9:00に出社しなければならない。

うん。完っ全に遅刻パターンですわ奥様。(満面の笑み)

　ハァ、とため息をつく。

「もう仕方ないね！？後でお腹すくけど！！―――領、域！！！」

　その瞬間、世界が変わる。

キンと冷えた炭酸飲料を飲んだような気分になる。喉がカッと燃え上って、でも頭はこれでもかと云うほど冴えている、不思議な気分だ。

強く、強く地面を踏みしめる。

風を全身で受ける。

「周囲２歩分しか使えないけっぼ！！？」

舌を噛んだ。ジンワリと血が滲んで、金臭い。不味い。痛い。

ひどく重要なのでもう一度云う。痛い。

＊＊＊

やがて後ろには誰もいなくなった。

「撒けた…かな？」

急停止する。

転ぶ。

痛い。

此処までが一連の流れである。

頻繁に此れと似たようなことを起こすのである。海堂は莫迦なのだ。

「あ、職場行かないとお賃金もらえなくなる」

と、そこで後ろから声がかかった。

「あれ、Aちゃんじゃない？こんな処で何してるの？」

ん？と振り替える。

あ、貴方は…っ！！
私は堪らず彼の元へ走り出した。