キモチ (ページ14)

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A Side

何が起きたのか理解できなかった

いきなりキスされて
ちょっと切ない顔で上目遣いされたと思ったら
付き合えない、とだけ言われて
先に帰られてしまった

追いかける、とか
泣きわめく、とか

そういうのさえもできなくて

とりあえず
今起きたことが理解できなかった

「…」

花火大会の帰りは
浴衣を着た幸せそうな
カップルがたくさんいる

わたし以外に1人で歩いてる人なんて
いない、

いるわけがない

『え？A？』

「…あらん？」

さっきまで一緒にいたあらんが目の前に

こんなに広い花火大会の会場で
偶然ばったり、なんて。

「みゅーと君は？」

『美勇人の家真逆だからさ、
あっちから帰ったよ』

「…そっか」

会話が広がらない

次の話題が出てこない

何も考えられない

『A…？どうした？
…しめとなんかあった？』

「…ううっ」

“しめ”

さっきまで一緒にいた彼の名前が
出ただけで自分がおかしくなる気がした

気付けば顕○に抱きついていて

『…A』

あらんはわたしに何も質問せず
ただただ泣いているわたしを
あやしてくれた

背中をさすってくれたり
頭を撫でてくれた

『帰ろ？』

泣いて真っ赤になっているであろう
わたしの目

涙であらんの顔もぼやけて見えた