episode８ ページ10
「こ、こうでしょうか……？」
「そうですとっても上手ですご主人様〜♪」
チェキを撮るスペースは小さなステージのようになっていて、周りがチョコレートをモチーフにしたかわいいオブジェで飾られている。
茶色とピンクの相性に間違いはないらしい。
とにかく甘くてかわいい。
毎日がバレンタインみたいで、そのステージが私は結構お気に入り。
で、そのステージには一人のメイドと司くん。
片手ずつ出して、二人で一つのハートを作ってポーズをしている最中だ。
このようなポーズをする機会はKnightsにはなさそうだし、少し手間取っているのがなんともかわいらしい。
「ふふ、見てください先輩方。司のこの美しいpauseを」
ドヤ顔をしてもかわいいし顔綺麗だしアイドルってすごいな、と思う。
ただ、私は司くんとメイドの距離感が尋常ではないことに気が付いた。
今更？ って感じだけれど、そういえばチェキを撮るときの距離はかなり近い。
二人でハートを作るのだから、それはもう肩と肩が触れてしまうほどに。
他店舗では「メイドに触れたら出禁！！！」というルールもあるようだけれど、ここではそういったものはない。
もちろん過度なスキンシップは注意の対象とはなるが。
だからこそ、肩と肩が触れてしまうような──というか触れることも普通にある距離感なのだ。
今までいろいろなご主人様やお嬢様と撮ってきたときには感じることのなかったのに。
「じゃあ次はセナだな！」
「ん。──準備大丈夫ですか？」
「え、あ、はい！ おねがいしま〜すっ！」
二人で一つのハートを作る。
肩も、指先も、ぎりぎり触れることはなかったけれど。
──ちか、い。
息継ぎも、心臓の飛び跳ねるような鼓動も、すべて聞こえてしまいそうな。
この想いが、すべて見透かされてしまいそうな。
つい、"ドキドキ"してしまった。
きっと今、私の顔は紅いだろう。
でも、表情には出してはいけない。
私も泉くんも、これは仕事なのだから。
個人的な感情は、しまっておくんだ。
「私を選んでくれてありがとうございます、ご主人様……！」
本当は、ファンとしての私がこんなことできるわけなくて。
こうして会えたのは奇跡だから。
感謝だけは伝えたかった。
両手から零れ落ちてしまうくらいに大きな幸せを、かみしめながら。
「──、……」
泉くんは微笑んでくれた。
きれいな、きれいな笑顔だった。
ただ、私は彼が何かを言いかけたように感じた。
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咲愛(プロフ) - ﾂｷさん» コメントありがとうございます！始まった頃から読んでいただけているとは、大変うれしいです！続きは本日中に公開出来たらと思ってますので、ぜひぜひ今後ともよろしくお願いします！ (2023年2月22日 16時) (
レス) id: 8b89f62398 (このIDを非表示/違反報告)
ﾂｷ(プロフ) - この作品が始まった頃から楽しく読ませて頂いてます！毎日更新が楽しみで素敵な作品に出会えたなと思いました！続き楽しみに待ってます！ (2023年2月21日 22時) (レス) @page50 id: 56454ebf31 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：咲愛 | 作成日時：2023年1月27日 12時
