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二十五話 ページ26

まだオレがヒトを殺して間もない頃の話。
その頃一番吐き気がするような殺しを今でも覚えている。

生きるために各地を転々と逃げ回って、ヒトを殺して、よく盗みをしていたそんなときに、山で大柄の男たちに追われて逃げる一人の餓鬼を見つけた。
歳は同じくらい。背丈はひょろくて、弱そうなやつ。
追手の男どもがヒトを売る奴等だとはすぐにわかった。でも特に助ける意味もなかった。だから見捨てようとした。

でも、捕まった餓鬼が男たちに囲まれて暴れる様をなんとなく眺めていれば、ふと目についたのは、暴れる餓鬼を押さえつけて楽しそうに、ニヤニヤと下衆な笑みを浮かべる男たちの かお。


ああ思い出すだけでも気に食わない。
死ぬような仕打ちを受けたオレには、ひょろい餓鬼を犯して快楽を得ようとするその男たちの態度が、顔が。すべて気に食わなかった。
何で笑ってんだ。何で幸せそうにできんだよ。そんな餓鬼を抑え込んで自分の思い通りにするのがそんなに楽しいか。なんでお前たちが幸せなんだ。なんでオレはあんな仕打ちを受けた。お前らは楽しそうにこっちを見て……………!!!




気づけばオレを中心に、血だまりが広がっていた。バラバラになって何なのかがわからない肉塊に、臓器に、あたりに充満する血生臭さ。
ああでもあのときのオレにはそれでも足りなくて。
離れたところで呆然としていた餓鬼も殺そうと、刃を、向け‥て、









「……、」


闇色…ああどっかで見たことがあると思った。
アイツはあの餓鬼だったんだ。道理で匂いが一緒なわけだ。


「…A?帰って‥、きたのね?」
「寝てろって、言った。」
「…うん、でも…一人は、寂しいの……」
「……そ。」


あの後オレは、餓鬼を殺せなくて。
その目に映る恐怖でも何でもない、恍惚とした目。


「…市。」
「なぁに?」
「……いや、なんでもねぇ。」


今でも思い出すと吐き気がする。


「あーあ、キョーミで行くんじゃなかった…」


そう呟いた声に何も言わず、ただ市はオレを抱きしめた。









ああ、明日は…セキガハラか……

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まゆ - 面白かったです^_^ヒロイン、強くて、かっこいいですね^_^市ちゃんとのやりとり、ほのぼのしていて癒されました^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月25日 22時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
狩有(稀にアーロ)(プロフ) - 雅姫さん» アーロです!殺戮シーンは狩有が担当しますが、やっぱエグいですよねぇ…。どこでそんなやり方を仕入れたのかが恐ろしくって聞けません(汗) 歪んだ二人だからこその異常なほのぼのが生まれるんです。いやぁ、BASARA4のお市可愛いなぁ(( (2016年8月31日 15時) (レス) id: fa9e2a923d (このIDを非表示/違反報告)
雅姫 - うわああ!主人公、殺し方が恐い!だけど、市とのやり取りにほのぼのしたのは何故だろう…? (2016年8月30日 21時) (レス) id: 471bbd1612 (このIDを非表示/違反報告)
狩有(稀にアーロ)(プロフ) - 百久一目さん» はい!これからも主人公の心の変化などに、乞うご期待です!(笑) (2016年6月26日 16時) (レス) id: fa9e2a923d (このIDを非表示/違反報告)
百久一目(プロフ) - わァい!!(呵呵大笑)では嬉々として怡怡として楽しみにしさせて戴きますね!!(感性がズれていて申し訳ありません) (2016年6月26日 15時) (レス) id: 421761368c (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:狩有&アーロ | 作成日時:2016年5月6日 1時

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