二十二話 ページ23
どうして楽しくて、心地良い時間は早く終わるのか。
あれからずっと、市をぎゅーっとしていたり、魔手と戯れたり、たくさん、たくさん遊んだ。
小っ恥ずかしい。でも楽しい。市だから。
ああ、今沈んでいくあの太陽を凍らせて、あの場に止めることができるのならどれほど良いだろう。
そうしたら、ずっと市と一緒にいれるのに。
「明日なんて、来なくていい」
「…明日ね、明日…いっぱい、いっぱいお花を咲かせたら 良いことが叶うの。」
「……」
このうじょうに来てわかったことは2つ。
1つは市の言う「お花」は死人。魔手がヒトを殺し それにヒトの 何か を食わせる。
何かは知らない。でもそれを食えば食うほど魔手は力がつく。何かを蓄えるように太くなった。
2つは明日の戦。「はおう」が殺され「きょうおうさんせい」が暴れ、二つに分かれて「せきがはら」という大きな戦が、明日ある。
オレもその戦には参加する。市を守るために。
短刀を、握りしめた。
「…市の望むこと、オレは邪魔しない。」
「………ありがとう。」
一度目を見開いた市は、少し恥ずかしそうにはにかんだ。
どうしてそんな顔をするのかがわからない。
「なに。」
「ふふっ…初めて会った時と比べたらね、別人みたいだったから、つい」
ごめんね?と言う市の言葉に、次はオレが驚く番だった。
一度 短刀を抜いて自分の顔を覗いた。
それは、最近やっと見慣れてきた いつも変わらない自分が映るだけ。
ただ違うのは、目。
物珍しさに狙われた琥珀色が、濁っていない。自分でも驚くくらい 澄んでいる。
それだけで、市と出会う前と比べると 随分と顔つきが変わった気がする。
隣から鈴を転がしたような笑い声が聞こえて 其方に目をやる。
「ね?A、前よりもとっても、とっても綺麗。市ね、やっぱりAの目が好きよ…?綺麗な色…透き通っていて、夕日に当たると、金色みたいに キラキラしているから………闇色さんのように」
市はオレの頬に手を当ててそう言うが、最後の言葉に何か引っかかるような感じがした。
その引っかかったものが気になって、ムカムカする。
「…誰、やみいろって。」
「えっとね、Aもわかるように言ったら 凶王三成って呼ばれている人よ」
とても寂しくて まっすぐな人。そう言ってまた、オレに擦り寄る市だったが、オレの中ではその「やみいろ」への興味がどこからか出てきた。
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まゆ - 面白かったです^_^ヒロイン、強くて、かっこいいですね^_^市ちゃんとのやりとり、ほのぼのしていて癒されました^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月25日 22時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
狩有(稀にアーロ)(プロフ) - 雅姫さん» アーロです!殺戮シーンは狩有が担当しますが、やっぱエグいですよねぇ…。どこでそんなやり方を仕入れたのかが恐ろしくって聞けません(汗) 歪んだ二人だからこその異常なほのぼのが生まれるんです。いやぁ、BASARA4のお市可愛いなぁ(( (2016年8月31日 15時) (レス) id: fa9e2a923d (このIDを非表示/違反報告)
雅姫 - うわああ!主人公、殺し方が恐い!だけど、市とのやり取りにほのぼのしたのは何故だろう…? (2016年8月30日 21時) (レス) id: 471bbd1612 (このIDを非表示/違反報告)
狩有(稀にアーロ)(プロフ) - 百久一目さん» はい!これからも主人公の心の変化などに、乞うご期待です!(笑) (2016年6月26日 16時) (レス) id: fa9e2a923d (このIDを非表示/違反報告)
百久一目(プロフ) - わァい!!(呵呵大笑)では嬉々として怡怡として楽しみにしさせて戴きますね!!(感性がズれていて申し訳ありません) (2016年6月26日 15時) (レス) id: 421761368c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩有&アーロ | 作成日時:2016年5月6日 1時