二十話 ページ21
見られた。
市に心配かけないように。ひとりで殺ろうと思っていたのに。
それでも、お市の目に怒りや驚きなどの色は見えない。不思議そうにAを見ていた。
「なにを…やっているの‥?」
「‥こいつが市を殺そうとした。だから殺す。」
「ひっ‥、」
お市は小さく悲鳴をあげるくノ一をギロリと睨みつけたAの側に歩み寄ると、魔手が畳の上に転がった潰れた目玉を拾い上げた。
それを見たAは怪訝そうに顔を顰め、八つ当たりのようにくノ一の背中に短刀を突き立てる。
「ひぎぃ‥っ!い"、だいぃぃ‥!!」
「……そんな汚ねぇモン、見なくて良い。市は少し待ってろ。すぐ片す。」
「……いいえ、」
もう叫ぶ体力がないのか、弱々しく痛みに涙を流すくノ一に再び短刀を突き立てるために腕を振り上げたAを、お市の白い手がやんわりと止める。
「おい、汚ねぇぞ。市が汚れる。」
「市は、市のAが汚れちゃうのが嫌。」
「………A?」
「うふふ‥、市が考えた貴女の名前…。」
ずぶ…
「ひぃっ!!?」
お市がAに にこりと笑ってみせると同時に、肉塊となった死体を含むくノ一の足元が、黒く染まった。
驚きと恐怖で悲鳴をあげたくノ一は、激痛が走る身体に鞭打ち、必死に逃げようともがく。
しかしそれは 伸びる魔手に抑えられて無駄に終わる。押し込まれる様に力を込められ 更に深く沈んでいく身体。哀しきかな 手のない腕を伸ばして助けを求めた先は
「た、すけ…‥、」
Aだった。
しかしどの道殺す標的にかける情けなどない。お市を護るように自分の背中の後ろに隠すと、Aはその短刀をビュッと下に振り降ろした。
空を切った刃から冷気が溢れ、手を伸ばしていたくノ一は氷漬けにされたまま ずぷりと音を立てて、姿を消した。
__ 真新しい血痕しか残っていない部屋でお市は返り血で汚れたAの顔をその美しく白い手で拭った。
「市、汚れる。」
「別に良いよ…だってこれで、Aとお揃いだから…」
本当に嬉しそうに笑う市にそっぽを向いたAはあのさ、と口を開く。
「…Aって名前、気に入った。」
「!うふふ…市、とっても嬉しい。」
そっぽを向いた彼女の切り揃えられた髪から覗く耳が 真っ赤なのは見なかったことにしておこう。
歪んだ二人の純粋な___
(…婆娑羅者だったの、隠していたの?)
(聞かれなかった。…それだけ。)
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まゆ - 面白かったです^_^ヒロイン、強くて、かっこいいですね^_^市ちゃんとのやりとり、ほのぼのしていて癒されました^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月25日 22時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
狩有(稀にアーロ)(プロフ) - 雅姫さん» アーロです!殺戮シーンは狩有が担当しますが、やっぱエグいですよねぇ…。どこでそんなやり方を仕入れたのかが恐ろしくって聞けません(汗) 歪んだ二人だからこその異常なほのぼのが生まれるんです。いやぁ、BASARA4のお市可愛いなぁ(( (2016年8月31日 15時) (レス) id: fa9e2a923d (このIDを非表示/違反報告)
雅姫 - うわああ!主人公、殺し方が恐い!だけど、市とのやり取りにほのぼのしたのは何故だろう…? (2016年8月30日 21時) (レス) id: 471bbd1612 (このIDを非表示/違反報告)
狩有(稀にアーロ)(プロフ) - 百久一目さん» はい!これからも主人公の心の変化などに、乞うご期待です!(笑) (2016年6月26日 16時) (レス) id: fa9e2a923d (このIDを非表示/違反報告)
百久一目(プロフ) - わァい!!(呵呵大笑)では嬉々として怡怡として楽しみにしさせて戴きますね!!(感性がズれていて申し訳ありません) (2016年6月26日 15時) (レス) id: 421761368c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩有&アーロ | 作成日時:2016年5月6日 1時