十話 ページ11
結局その後、三人で選び抜いた数着の着物を購入して、店を出る頃にはもう日は大きく傾いていた。
母の代わりに店の前まで見送りに来た娘は、なんだか嬉しそうに笑いながら、
お母ちゃんがまたよろしくって言っていたわ。 と告げた。
そんな彼女と手に持った着物の入っている風呂敷を交互に見て、自分は言いにくそうに顔を俯けた。
「あの…よ、」
「ん?」
いつもなら、思ったことはすぐに口から出てくるのに、今回は自分らしくもなく、初めて言う言葉につい語尾がしりすぼみになった。
「その……、アリガトウ…。」
「! なぁに言ってんのよ!こっちこそ、とっても楽しかったわ!ありがとね!」
にっこりと最高の笑顔を浮かべた娘は、また来て頂戴ね!と言って自分の小指と彼女の小指を絡ませた。
約束よ?といたずらっぽく笑う娘に、いろんな笑顔をする娘だ。と思いながらこくりと頷き、そのまま姿が見えなくなるまでずっと手を振り続けていた娘と別れて、家に帰る道を戻った。
「よぉ、嬢ちゃん…こんな暗い時間、一人で歩いてちゃあ危ないぜぇ?…ん?
…へぇ、なかなか良いもん持ってんじゃあねぇか。」
「……邪魔。」
いつもと違って土や血の匂いのしない着物の真新しい生地の匂いになんだか機嫌がよかったが、
目の前で下衆な笑みを浮かべる山賊たちに絡まれ、いまの自分の気分は最悪。
じろじろと風呂敷を狙うように見る山賊。その一人が、そのまま自分に掴みかかって来た。
「……あ?」
…が、次の瞬間には、その山賊の伸ばされた腕は地面にボトリと落ちていた。
状況がうまく飲み込めなかった山賊は、だんだんと理解したのか、切り口からの激痛にのたうち回った。
あまりにも一瞬の出来事に他の山賊たちも何が起こったのかわからないようで、ざわざわと動揺のどよめきが広がる。
そのどよめきを起こした本人は、血の付いた短刀を山賊たちに向け、冷たく、地を這うような低い声で言い放った。
「聞こえなかった…? 邪魔。……失せろ。」
それとも…、と言いかけた彼女は、足元で止血をしようと蹲りながら腕に布を巻く先程の山賊の後頭部中心に、どす、と容赦無くその刃を刺した。
どさり、と息絶えたことによって倒れる死体を見て、ひぃっとあちらこちらから悲鳴が上がる。
「こうなりたいか…?」
着物を汚したくないんだ、と狂気的ににたりと笑った彼女に、
その場にいた誰もが刃向かうという馬鹿なことはしたかなんて、言うまでもなかった。
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まゆ - 面白かったです^_^ヒロイン、強くて、かっこいいですね^_^市ちゃんとのやりとり、ほのぼのしていて癒されました^_^続きが、すごく気になります^_^これからも、頑張って下さい^_^ (2017年11月25日 22時) (レス) id: 8c0a96a096 (このIDを非表示/違反報告)
狩有(稀にアーロ)(プロフ) - 雅姫さん» アーロです!殺戮シーンは狩有が担当しますが、やっぱエグいですよねぇ…。どこでそんなやり方を仕入れたのかが恐ろしくって聞けません(汗) 歪んだ二人だからこその異常なほのぼのが生まれるんです。いやぁ、BASARA4のお市可愛いなぁ(( (2016年8月31日 15時) (レス) id: fa9e2a923d (このIDを非表示/違反報告)
雅姫 - うわああ!主人公、殺し方が恐い!だけど、市とのやり取りにほのぼのしたのは何故だろう…? (2016年8月30日 21時) (レス) id: 471bbd1612 (このIDを非表示/違反報告)
狩有(稀にアーロ)(プロフ) - 百久一目さん» はい!これからも主人公の心の変化などに、乞うご期待です!(笑) (2016年6月26日 16時) (レス) id: fa9e2a923d (このIDを非表示/違反報告)
百久一目(プロフ) - わァい!!(呵呵大笑)では嬉々として怡怡として楽しみにしさせて戴きますね!!(感性がズれていて申し訳ありません) (2016年6月26日 15時) (レス) id: 421761368c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:狩有&アーロ | 作成日時:2016年5月6日 1時