検索窓
今日:3 hit、昨日:10 hit、合計:8,382 hit

御伽噺*拾伍 ページ16

.



「貴女馬鹿ですかっ!!」



怒鳴る丁。Aは思わず肩を震わせた。
普段無表情の彼が、少し険しい表情だった。



『ごっ、ごめんなさい…。』



「全く…分かればいいのです。心配したんですから」




俯き加減のAに丁は優しく抱きしめた。




『え、ちょ、え??』



「怒った後はこうするんです…多分」




最後は小さくて聞こえ無かった。
でも、そんな事より。

丁が自分の事を大切にしてくれていた事が
とても嬉しかった。

拾ってくれた両親以外、
信じられる人なんて居なかったから。


そして自分がどれだけ心配掛けていたのかも分かった。




『っ、怖、かった…死ぬかも、って、』



「はい」



『ごめん、それと、助けてくれて、ありがとう。』




涙を零しながらお礼をした。
普段笑った事の無いAが、笑った。

丁は其の笑顔を見ると、心臓が跳ねた。




「どういたしまして。それにしても、

貴女は強いのに泣き虫ですね」



『うっ、うるしゃ…ぁ。』



丁「噛んだ」



『言うなあっ!!!』



丁「はいはい。さあ帰りますよ」




気が付くと風も止み、
雲の隙間から光が差し込んでいる。

すっ、手を差し伸べてくれる丁。

Aは涙を拭い素直に其れを受け取った。
少し前の彼女なら、この手を振り払っていただろう。

でも今の彼女は変わった。変わる事が出来た。

其の場に立ち尽くして居ると声を掛けられる。




「どうかしましたか?」



『丁、て、冷たい。』



「そうですか? いつも通りですよ」



『嘘つき。いつもはもっと、あったかいでしょ。』




きっと此の寒い中、ずっと捜してくれて居たのだろう。
両手でAは丁の手をさすった。




『あったかくなった?』



「はい。ありがとうございます」



『……? 』




何故か心が暖かくなったA。
不思議に思い、左胸に手を当てる。

何時もより心臓が速く動いている気がした。




「さっきから大丈夫ですか? 体調悪かったり…」



『し無い。だいじょぶ。』



「ならいいです」



『ねえ丁。』




はい?と此方を見て首を傾げる。




『大きくなったら、この村をふたりででよう。

こんな理不尽な処から、逃げてちがう処で過ごそう?』



「じゃあ約束、ですよ」



『うん。やくそく。』




またAはふわりと笑った。







この約束が、叶わ無くなるなんて。






知るはずも無く ___ 。

続く お気に入り登録で更新チェックしよう!

最終更新日から一ヶ月以上経過しています
作品の状態報告にご協力下さい
更新停止している| 完結している



←御伽噺*拾肆



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (45 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
27人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

柑子露草(プロフ) - 戦闘民族さん» うわあああ!!!ありがとうございます!!!長い間放置してすみませんんんんん(;´Д`) 頑張ります! (2015年3月18日 22時) (レス) id: 610b89f73f (このIDを非表示/違反報告)
戦闘民族 - 続き頑張れ! (2015年3月18日 19時) (レス) id: f03c171f68 (このIDを非表示/違反報告)
柑子露草(プロフ) - 璃乃さん» ありがとうございます\( 'ω')/頑張りますねっ (2014年9月27日 18時) (レス) id: 830b7798e6 (このIDを非表示/違反報告)
璃乃 - 続き頑張って下さい!応援してます (2014年9月27日 14時) (レス) id: 2b9f558fbd (このIDを非表示/違反報告)
柑子露草(プロフ) - いのりさん» アカウント?ありがとうございます!フォローさせて頂きます( *´ω`* ) (2014年6月11日 7時) (レス) id: 830b7798e6 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:柑子露草 | 作成日時:2014年5月4日 10時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。