【鬼灯の冷徹】鬼と云われた少女の誰も知ら無い二人の噺【六兆年と一夜物語】

御伽噺＊拾肆 ページ15

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ここ最近雨も降らず困っていた、が。
今日は、酷い雨だった。

Aは自宅から出るか迷っていた。
今日は自分を大切にしてくれていた両親の命日。

墓参りに行かなければ。
でも生憎の雨だ。危険過ぎる。




『……どうしよう。』




迷った末、少しだけなら…と思い
墓のある崖へ向かう事にした。




＊




丁は、外を眺めていた。
酷い雨が降っているな、と。

これではAに会え無い。

一日我慢すれば良いだけの筈なのに、
何故か其れが寂しく感じる。

そう言えば、Aが両親の墓参りに行く
と行っていた事を思い出した。

律儀な彼女の事だ。
恐らく此の雨の中向かうのだろう。

しかし賢いのも事実。
そんな危険な真似をするだろうか。




「……彼女の家へ向かってみましょうか」




悩んだ末、此の結論に至った。





＊






『母さん、父さん。私、ともだち、できたの。

丁っていうんだけど、あたまのいい奴で、
優しいんだ。』



墓…といっても、大きな石を二つ並べただけの
簡易的な物の前で手を合わせた。

そして語りかける。

今日の話題は丁のものばかりだ。



『じゃあ私、いくね。また来るから。』



いつの間にか雨は止み、風が吹いているだけ。

Aが立ち上がり、くるりと向きを変え
歩き出した時だ。

ごおっ、突風が吹いた。
突然の事にバランスを崩してしまった。




『きゃっ!?』




そのまま崖の方へ。




『ああ、私…死ぬのかな。』




其の時、Aには時間が過ぎるのが
とても遅く感じた。

どうせなら最期、丁に会いたかったな。

なんて思いながら。

ゆっくり目を瞑る。

するとぱしんっ、乾いた音と共に
手首に違和感を覚えた。

前に引き戻される体。ゆっくり目を開けてみれば
丁の姿があった。



『丁、』



「貴女馬鹿ですかっ!!」

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