【鬼灯の冷徹】鬼と云われた少女の誰も知ら無い二人の噺【六兆年と一夜物語】

御伽噺＊拾参 ページ14

*


其れから数日。



Aは丁と会う時は前髪を耳にかけるようになった。




丁「Aっ」



『何。』



丁「目、瞑ってください」





良く分から無いが取り敢えず目を瞑る。


少しすると髪に違和感を覚えた。


目をゆっくり開く。




『何、したの。』



丁「こっち来てください」




今度は手を引かれる。


一体何なのだろう。


来たのは川辺。




「やっぱり似合ってますね」



『！これ、』




川を覗き込むと自分の姿が写り、
彼が何をしていたかが分かった。

丁はAに髪留めをしたのだ。


其れには赤い木の実が付いていて、
Aの髪に良く映えた。




『これ、どうしたの。』



「貰い物です」



『え。』



「私が使う物ではありませんから」



『誰に貰ったの?』



「神様?ですかね」




Aは思わず目を見開く。

そんな者、居る筈無い。と。




「えっと…あ、神獣でした」



『シンジュウ?』




聞き慣れ無い言葉に思わず問い返す。




「獣の姿をした神様みたいです」




更に「人の姿にもなれる」と聞いて驚いた。
世の中、知らないことばかりだ。




『へぇ…とりあえず、あ、あり、がと…丁』




初めて丁の名前を呼んだA。
恥ずかしさの余り真っ赤になっている。




「！今、名前…」



『悪い、か。』



「そんなこと無いです。嬉しいですよ」



『なら、いい。』





ふい、顔を逸らしてしまったA。

だが丁はAが変わってきている事が、
とても嬉しかった。

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