【鬼灯の冷徹】鬼と云われた少女の誰も知ら無い二人の噺【六兆年と一夜物語】

御伽噺＊拾 ページ11

*


「貴女の名前、教えてください」





『……A。あたらしく拾ってくれた
お母さんとお父さんが、つけてくれた。』



一つ一つ、丁寧に、大事そうに紡ぐ。
優しく、優しく。



「A、さん」



確かめるように呼ぶ丁。
其れに対し少女＿Aはやはり ぶっきら棒に答える。


『……なに。』



「“A、良い名前ですね”」



『………っ、、』



ぽろり。




「……え？」



其の言葉が嬉しくて、Aは涙を零す。

ぽろぽろ、ぽろぽろと。長い前髪をすり抜けて、
透明な粒が頬を伝った。



「ちょ、泣かないでくださいっ」



＊


丁視点


彼女、Aはまた泣き出した。
会う度…と言ってもまだ二回目だが。


女性が泣き出した時はどうすれば良いのでしょうか。



『馬鹿っ…泣いてなっ…。』



ぐずっ、鼻を啜りながら言われても
説得力なんて無いのですが…。



「私なにか悪いことしましたか？」



とりあえず訊いてみる。



『…な、も…して無い…。』


「では何故、」


『…強いていうなら。』


「？」


『…貴方が、その…嬉しいこと いってくれた…から。』


丁「そんなこと言いましたか？」


『…良い名前、だって。

お母さんとお父さんがつけてくれた、だいじな名前。

私、名前と両親はだいすき。ほかは ぜんぶ、ぜんぶ

大っ嫌い。あ、貴方は嫌いじゃないよ。』



一度後ろ向いて、またこちらを向いた。

口元は少しだけ緩んでいる。



「そうですか」


『うん。あ、ほら。はやく おわらせよ。』



手元の洗濯物を洗い始める。



彼女はもしかしたら、お喋りが好きなのでしょうか？

何か話題を探してみましょう。

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