# 声 ページ29
「今年はお花見無理かしらね〜…」
「まぁ、お家で集まりでもしましょうよ」
「それいいわね」
雑踏の中聞こえてくる際立つ癇に障る声。
内容は花見。今年は雨がすごくて見れそうにない。
風で木は倒れる、花は散る。
シートを敷こうもんならすぐ吹っ飛ばされるだろう。
隣にいる黄色の目が声の方に目を移して、じっと睨んでいる。
夢「A」
『…あ、ごめん』
夢「なにか気になることでも?」
『…あ…いや…なんか、今年はいつも通りじゃないそうだね、僕はずっと眠ってたからわかんないけど…』
夢「そうですね、台風が例年より強い」
『…例年…それは…お花見ができないほどの強さなの?』
夢「まぁ…そうですね…あ、そうだ」
『ん?』
夢「…なんでもないです。あなたが思い出すことが出来たら、教えましょう」
『…なんの事だよ〜!気になるじゃんか!』
夢「日に日に乱数に似てきていますね、A」
『まぁね、クローンなだけある』
夢「でもあなたは少し周りと違う…けど乱数のクローンなんですか?」
『…僕はまだヒプノシスマイクを持ったことがないけど、強いらしいね。乱数には勝てないと思うけど…乱数が最初の既製品だし』
淡々と話す目は少し濁っていて、
雨の音にかき消されないようにと
声が空に昇っていく。
夢「でも、あなたも 詩狗嗎 としては既製品なのでしょう?」
『……一緒にしないで』
信号が変わり、足を踏み出す。
なんでもないような動作だけど、奇跡だ。
神秘的とでも言うべきだろうか。
『…まぁ僕は僕だし?…これからもそうなんだろうけどっ…』
数歩前にいたAが振り返り人混みの中笑顔をみせる。
『それでいいなら…これから4人で一緒にいよう』
笑顔で懇願するかのように、手を出す。
夢「そんなの…当たり前じゃないですか」
俺はその手を取り、しっかりと握りしめた。
残り二人分の思いは…考えるまでもない。
『そう言ってくれると思ってた!』
雨の中傘もささず
夢「家に帰りましょうか」
雨に濡れた髪を晒し
『僕、なんか僕じゃないみたい!』
瞳に浮かんだ微かな涙が
夢「…詩狗嗎、おかえりなさい」
無意識に零れ落ちた瞬間だった。
重力に負け、下に伝っていく様は
それは、それは綺麗で。
確かに涙だった。
『うん……!ただ〜いまっ!」
涙が出ていたのは右目から。
本当かも分からないその情報に、俺は心を踊らせた。
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舞(プロフ) - 更新頑張ってください!更新されるの待ってますね(^^)v (2020年3月16日 14時) (レス) id: e826140184 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:幻路 | 作成日時:2020年3月16日 11時