名前を呼んで。【ツイステ】

ep25.愛？いいえ毒 ページ25

『化け物には、化け物だけが使う愛言葉が、ある。』





何処からか現れた美しい蝶が、Aの指に止まる。
美麗な容姿も合わせて、蝶を見つめるAはまるで聖母のようで、絵画なのかと錯覚してしまうほどだ。





『この子(蝶)、何て言う名前か、分かる？』




ｼﾙﾊﾞｰ「確か…モルフォチョウ」




『うん、せーかい。』





モルフォチョウ。

「森の宝石」と称されるほど美しい蝶で、光沢のあるアクアマリン色の羽は何処か儚い。





『一握りに怪物と言っても、色んな怪物がいる。相手に支配されたい、相手に殺されたい、相手に壊されたい、相手に屈服したい。…対等になりたいってタイプは、あんまりいない、かな。』



ｾﾍﾞｸ「………異常だ。」



『ふふ、そうだね。』




何処が面白いのかマレウス達には分からない。

でも、Aは笑う。
心底愉快げに、心底嬉しそうに。





『私の愛は、毒(・)なの』





ぐしゃり




何処か心地よく、何処か不快な。
矛盾を極めた音が、マレウス達の耳に届く。


Aの丸めた手から滴る、真っ赤なモノ(血)。
さっきの音と、「それ」を見れば何が起こったのかなんて一目瞭然で。





『だから、私の愛言葉は──蝕む。』




＿＿＿＿愛したい(蝕みたい)。





ゾクッ、とリリアの背中に冷たいモノが走る。
長い年月を生きて、年を重ねて、異常な輩は両手で数えきれないほど見てきた。





『ﾆｺｯ』



ﾘﾘｱ「ッ………」





今、己は何に怯えた？

あくまで表面上は笑顔を崩さない。





『私は、壊されたい欲求、なんだけどね。
蝕んで、────殺すの。』





儚い見目から、先程は蝶のように見えた。

美しいながらも、毒を持つ蝶。
食べた鳥が苦しみのあまり嘔吐してしまうような、残酷な蝶。




そんな、生温いものじゃない。




彼女は、蜘蛛だ。
自分で獲物を糸に絡め、一度捕まれば二度と離してなどくれない。






ﾏﾚｳｽ「驚いた。
お前は捕食される側ではなく、捕食する側なのか。」





見た目は美しい娘。だが、中身は捕食されるいたいけな小動物ではなく、捕食する肉食獣。


まさに、怪物(バケモノ)。






『どう考えても、いいよ。
見た目は人だから、人と思ってもいい。
でも、本質は怪物だから、それは視野にいれておいてね？』





何処からか吹いた風が、彼女の髪を揺らした。

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