殺し屋やってるらしい。2【浦島坂田船】

killing night 65 ページ17

あの人が私の名前を呼んだだけですぐにわかってしまった。
あんなに頑張っても思い出せなかったのにたった１つのことでこんなにもあっさりと思い出してしまうなんて。

如月A
本名
一ノ瀬A

その兄
一ノ瀬彼方

空を見るのが大好きなそらる兄さん。
まさかこんなところで会うことになるだなんて。

「やっぱり、生きてた…！生きてて良かった…！」

兄さんはそう言って、私を抱きしめようとした。

「触んな。」

伸ばした兄さんの手をうらたがはたく。
その声はあからさまに怒りを露わにしていたけれどうらたが兄さんに怒る理由が私には分からなかった。

(私を少しは思ってくれている…？)

そんなハズない。
うらたが私を思うはずがない。

彼を思う気持ちが他の人とは少し違ったものだと気づいたのはつい最近。
でも自覚する前に彼にこの船の中で会った時からそういった気持ちはちらついていたのかもしれない。

昔、先生から聞いたことがある。
それは、恋や愛というものらしい。

先生の言うそれと私がうらたに抱く気持ちが同じなら、もし、同じなら、
それは一方的で醜い。

「兄妹のことに、口を出さないでくれないか。」

「口は出さない、でもこいつ触れるのは許さない。」

「A、話があるんだ。」

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