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空嘘薬*おそ松 ページ24

むつ担当




『A、突然だけど引っ越しが決まったわ』




お母さんから突然放たれた引っ越しという言葉は、私の思考を止めることには事足りた事だった。



勿論私は引っ越したくないし、ずっとずっとこの赤塚の町で過ごしていたい。



そうお母さんに伝えるけど、理由がお父さんの転勤って知って仕方ないと思った。



お父さんは家事全般できないような人。


お父さんだけ引っ越させたら、ろくな生活を送れないはずだ。



「仕方…ないのかな」



引っ越しを告げられた次の朝。

赤塚高校への道のりを歩きながら、誰に言う訳でもなく呟いた。



「あ、A!!っはよー!」

「ん?あ、おそ松、おはよ」



とんっ、と肩を叩いた張本人、おそ松がニコニコしながら挨拶する。

私は力なく笑いかけた。


「ん?なーに元気ねぇんだよー!彼氏様様が許さねぇぞ?」


大口を開けて笑うおそ松に、あぁおそ松ともお別れか、思ってしまう。



そんなことも露知らず兄弟に対して愚痴をもらすおそ松を見て、ズキンと心が痛くなった。

_______

引っ越しを告げられて、一週間たった頃。



来週の日曜にはここを離れるらしく、友達にそのむねを話していた。

みんな、悲しいな、とか、住所教えてね、とか言ってくれる。


その度に胸が締め付けられた。


こうやって引っ越しちゃうって話して回るほど、引っ越すんだって実感がわいて、余計に引っ越したくなくなる。


「A引っ越すのかぁ…あ、おそ松くんには伝えた?おそ松くん拗ねちゃうよ?」

「あー…うん、伝えなきゃなぁ」


親友の有里に引っ越しを伝えると、彼氏には伝えたのかって聞かれた。


そりゃ伝えなきゃっていうのはわかっている、つもりだ。


でも、伝えたくない。

伝えて離れるのが怖い。



「…いっそのこと別れちゃえば?」

「………え」

「だーかーら」


頭をガシガシ掻きながら、言いづらそうに言葉を紡ぐ。


「引っ越しを告げる前に、別れちゃえって話よ」


ボサボサになった彼女の頭を、手櫛でとかしながら考える。


別れるほうが、心の整理になるのかな。



「…一錠飲めば、一日の効果があります、戻したい場合は、炭酸水を飲んでください」


デカパン博士に頼んでつくってもらった、空嘘薬。

何でも、一錠飲んだら一日中言うことが嘘になるそうで。


これなら、おそ松に嫌われて、別れることができるはずだ。


未練を残さないで、赤塚から離れられる。




「……おそ松、ごめんね」

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作者名:まねみー&むつ x他1人 | 作者ホームページ:   
作成日時:2016年9月21日 20時

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