36 ページ36
どう伝えたら下心ではなくきちんと大切に思ってることが伝わる？
それともこのまま何も言わずに全てを押し殺す？
多分それが正解。
Aはそれを望んでいる。
Aが、仕方ないなぁって言って俺の分もビールのプルタブを開けようとした。
薄くてきれいな爪がパキン折れてしまいそうで咄嗟にビールを取り上げる。
一瞬手が重なった。
冷たいビールとAの体温に目の前がぐらりと歪む。
「どうしちゃったの、櫻井くんー」
なんだかAがモニター越しにいるくらいに遠く感じて乾杯もせずにビールを飲む。
Aの頬が強ばって、笑いかけて、やめた。
困らせてる。
けどさ。
俺を全く男として見てなかったお前も絶対悪いと思うんだ。
馬鹿だ。Aは、馬鹿だ。
そして誰よりも、俺が一番馬鹿だ。
ため息を吐いて足を組もうと体重を移動させたら、Aがビクリと体を弾ませた。
そうだよ、その反応が当然。
お前は獅子に睨まれた兎だってことを自覚すべきなんだよ。
テーブルの上に無造作に置いたままのAの手に指をするりと絡めてみた。
Aの表情が完全に破綻した。
「え、櫻井くん……？」
あ。
泣く？
泣かせたいわけじゃない。
むしろ笑っていて欲しい。
怖がらせるつもりはない。
それに嫌われるのはちょっとキツイ。
怯えて泣きそうになってるAを見て、全部冗談に片付けてしまういい方法が頭を過ぎった。
「……どう？」
「なに……？」
「ちょっとは色気感じた？」
「……」
「……」
なんて。
いたずら成功って顔で笑ったらAの目が三角になった！
「……は？」
「……フフン」
「ばっ…………か！バカタレ！」
Aが立ち上がって怒り出した！
大げさに怯える俺。
「やっぱ飲まなきゃ無理かぁ、手強いなぁ！まぁ飲め飲め！飲んで今日こそ俺の色気を聞き出してやる」
ああ、やだ。俺天才だわ。
誤魔化す天才。こんな才能いらない。
「バカ……」
「あ、おこった？」
「今から一晩一緒にいる羽目になるのに迷惑だなぁと思っただけです！」
「なんだよう、冷たいなぁー」
怒ってるけどホッとしたみたいにご飯を食べだすAを見て、誤魔化してあげて良かった、と思い直した。
「せっかくだから美味しいもの食べたかったよね、ルームサービスでも良かったかも」
「……」
「無視すんなよー……」
あ。睨まれた。
でもまぁ、一晩一緒にいる羽目になるのに迷惑だと思うのならこれでよかった。
俺は全然良くないけど。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2345人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「嵐」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あーり(プロフ) - 彼サイドとても嬉しいです。あの時の行動にそんな思いがあったのか！とドキドキしながら読ませていただいています。これからの更新も楽しみにしています！ (2021年3月6日 23時) (
レス) id: 55a75ee2ee (このIDを非表示/違反報告)
ささたく(プロフ) - 強く賢い女性、きっと彼も好きなのでしょう。でも。雑ではあるけど元カノの気持ちも理解できるかなあと。主人公の聡明さを重く感じる男性もいそうですよね。恋の道は難しい！次回も楽しみにしています！ (2021年2月28日 17時) (レス) id: 0cad052d81 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - おはようございます。やばい。と無理。しか言ってない(という印象ww)櫻井くん堪らない(泣)好き(泣)次の更新は違う意味でﾊﾗﾊﾗするの分かっていても楽しみにしてます！もう1回読んでこよう♪ (2021年2月26日 10時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
コズ(プロフ) - 待ってました！待ってましたとも！しょっしょっしょうさーーーん！やべえ！なんだこれ！って心の呟きが全てリアルボイスで再現されててニマニマ読んでました！ヒロインちゃんが葛藤していた時に翔さん脳内はずっとやっべ！やっべ！ってお花畑だったんですね♪堪らん！ (2021年2月26日 9時) (レス) id: b75159ca86 (このIDを非表示/違反報告)
みっちゃん(プロフ) - 更新ありがとうございます！この時の翔くんはこんな気持ちだったんですね…！幸せそうな様子にこちらまで幸せな気持ちになりました。 (2021年2月26日 4時) (レス) id: fe478f12ec (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2021年2月18日 0時
