〇≠無の証明Ⅳ－４ (ページ33)

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「僕も失礼しますね」

有無を言わさぬ勢いで中間さんがそう言った。
私達を監視してるんだ。

「今回は……ありがとうございました」
院長が私達を見てすぐに立ち上がって頭を下げた。

「いえいえ、頭を上げてください」
櫻井さんがそう言った。

「もう何がなんだか……」
院長が頭を抱える。

「院長は……悪霊の存在を信じますか？」

櫻井さんが唐突にそう言った。

「こんなに工事が止まったり、自死が続いたりしたら呪われてるんだろうなとは……思いますけど……」

院長の戸惑った表情を見て、櫻井さんが一つ頷いた。

「今から話す内容は僕の仮説です、聞く人が聞けば馬鹿馬鹿しい話でしょうけど、僕達はそれを大真面目に捜査した結果です」
「はい。あ、どうぞおかけください」

院長がソファに促して座って、その前に櫻井さん、その横に大野さんが座る。
その隣に中間さんが座った

残った私達はそれぞれに立って櫻井さんの話を聞く体勢になる。

「まず、院長が仰る……その呪いは、1957年に殺人現場を見てしまった少年の遺体が裏の池から発見されたことが発端だと思われます」
「……尾野さんの……」
「そうです。彼は殺人現場を目撃してしまい、そのために口封じされた。その時殺されたのは1965年に埋め立てた池から見つかったエダノキヌコさんです」

院長が前のめりになった。

「その犯人は……」
「犯人は当時世間を賑わせていた連続殺人犯だと推測します……恐らく、今日見つかった白骨遺体の一人が犯人です」
「それは誰……」
「以前ここで内科医として働いていた井田蔵医師のお兄さん、井田蔵験太郎、ではないかと……」

初めて聞く名前に私達は思わず櫻井さんの顔を見た。

「井田蔵先医師のお兄さんが行方不明なのはご存知でしたか？」
「……あの兄は定職にもつかずにたちの悪い人たちとの付き合いもあって……井田蔵家から勘当されて母方の旧姓を名乗ってる、と聞いていましたけど……」
「ええ。ここからは僕の仮説です。ですがすぐに答え合わせできるかと思います」
「……」

櫻井さんが書類をバサバサとめくって、少し頷いた。

「その殺人現場を目撃していたのはオノマサトシくんだけでなく井田蔵医師も目撃者の一人だったのか……とにかく屑山と名乗っていた自分の兄がエダノキヌコさんを殺害したことを知ってしまった」
「……」
「そこで彼は……兄を始末したのだと僕はそう推測しました……」

櫻井さんはそこで言葉を切ってため息を吐いた。