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「でも井田蔵先生はもう……」
「そうです、2003年に工事が再開されたときに倉庫で自ら死を選んでいらっしゃる、それはなぜかと考えたら答えはおのずから出てくる」
「……隠した遺体が見つかると自分に疑いがかかるから……なのか？」
「そうです、工事をやめるようにあれこれ細工して、結局逃げ切れないと悟ったのか死を選んだ……結果としてその兄の遺体は今日まで隠されたことは皮肉です」
院長が頭を抱える。
「ここまでは、理解した……けど悪霊とは？」
「ええ、僕が何故、そう考えたかというと、ちゃんとした理由があるのです」
「……はい」
「噂になっていた連続殺人犯は、鎌を持った男でした。そしてその霊が旧館に出始めたのが、オノマサトシくんが亡くなったあと」
「……」
「つまり鎌の男はその時はもう死んでいなければならない。しかも何故か旧館以外からの目撃証言がない。つまり、鎌の男の遺体は旧館のどこかにある」
「あの旧館、すごい結界張られてんの、あの中霊は入れないし、あの中にいる霊は閉じ込められてる」
二宮さんが櫻井さんの言葉を付け足すようにそう言ったら院長が目を上げた。
「何回もお祓いしてるからですか？」
「わかんない、けど、鎌の男は中にいた霊を全て吸収してめちゃくちゃ大きい悪霊になってたんだよ」
院長が眉間にシワを寄せる。
「大きい悪霊になったらどうなるんですか」
「人の心を乗っ取って感情を支配する、とか簡単でしょうね」
櫻井さんがそう言って苦笑した。
「話は戻りますが……鎌の男の霊が出る、つまり殺人鬼はもう死んでいるということになる。工事が再開されたら井田蔵医師が亡くなった」
「……」
「井田蔵医師を調べたら行方不明の兄がいることがわかった。兄は当時入院していたエダノキヌコさんに言い寄っていたこともわかった、振られたそうですが」
「……」
「その点と点を繋いだら、犯人は井田蔵験太郎の可能性が高い……。そしてその犯人は霊となって旧館に居座ることになった」
院長が腕を組んだ。
受け入れられないようだ。
それはそうだろうな。霊とか言われてもピンとこないのが普通だ。
中間さんも困ったように資料をめくってる。
「続けます。井田蔵医師が亡くなったのと同時期に看護師が一人行方不明になっていますね」
櫻井さんがそう言った。
大野さんは真剣な顔で考えてるように黙ってるけど心の中で、は？と思ってることが心を読まなくても伝わってきてる。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2020年3月5日 16時
