〇≠無の証明Ⅳ－４ (ページ23)

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「行くよ」

松本さんがじわじわと階段を登る。
一歩ずつ、足元や頭上を確認しながら上がっていく。

大野さんが松本さんの横まで行って、二人並んで登りだした。

「鎌の男の霊、どこいったんだろ……」

相葉さんがぽつりとそう言った。

「鎌の男はこの病院から出れないみたいだったよ、静電気に弾かれるみたいになってた」
「……結界のせいだね」

二宮さんがそう言ったあとに、私の顔を見る。

「マサトシはどうやって外に出たの？結界張ってんのに」
「しっ」

松本さんが私達に人さし指を唇に当てて振り向いた。

屋上を指差す。
鍵を開けてる。

何か武器になるものは。
カバンの中に急いで手を突っ込んだら、ジップロックが手に当たった。

それを握りしめて、大野さんが扉を開けようとする背中をみつめる。

ギイ。

扉が開く。

少し開けた隙間から、目の前に黒いレインコートのフードを深くかぶって、鼻から下を何か布でおおっている人が目に入った。

……鎌、振り上げてる！

大野さんがそれを見て、
「お！」
と言ってドアをパタンと閉めて鍵をかけた。

「あはは、やべー奴がいた」
「……」

みんなが絶句する。

いやいや、なんでそんな冷静なの。
同じくらい大野さんもやべー奴だよ。

「どうする？」
「どうするったって、え？」

二宮さんがちょっと笑った。
なんでみんなそんな余裕なのよ。

ガチャリ。
と音がして鍵が開いた。
そりゃそうだ、外からでも鍵は開く！

慌てて松本さんと大野さんがドアを押さえて動かないようにした。
慌てて相葉さんと櫻井さんもドアを押さえた。

4対1。数では有利。
けど、殺意を持った人間とそうでない人間の力の差は大きい。
敵は武器を振り回しても全員敵だけど、こっちはうっかり味方に当たったらどうしよう、なんて考えたりしてそういう意味でも不利だ。

「どうする？」
大野さんがもう一度みんなに聞く。

「じゃあ、３、２、１、ゼロのタイミングでみんなが一斉にどいたら、鎌男、勢いでこっちに転がってくるんじゃない？」
二宮さんがそう言った。

「よし、とりあえず鎌男の正体を暴いてやろう」
「ん。じゃあ行くよ、せーの」

みんなで、３、２、１、と声を揃えた。

「ゼロ」

全員が一斉に手を離してバッとドアから離れる。

ばあーん！と音がしてドアが開く。
男は、よろめいただけで、転がらなかった。

転がったら手の鎌を蹴り飛ばしてマウント取ればいいだけだったのに！まずい。