〇≠無の証明Ⅳ－４ (ページ12)

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事務長の秘密(03/10) ページ12

再び病院に着いて、会議室に向かおうとしたら、差島さんが私達を見つけて走ってきた。

「あ、差島さん、先程はどうも」
「東城さん東城さん」
「どうしました？」
「さっき言い忘れたんですけど」
「はい？」
「ちょっとこっち」

腕を引っ張られて病院の外に連れて行かれる。

「翔くんついて行って？俺ら先に行くね」

大野さんがそう言って、櫻井さんが慌てて私を追いかけてきた。

「どうしました？」
人気のないところまで来て、差島さんがハー、と息を吐いた。

「あの……事務長のことなんですけど……」
「河東さん？」
「はい……あの方の話はご存知ですか？」

櫻井さんと目を見交わす。
聞き込みしなくても差島さんから言ってきてくれるのは非常に助かる。

「河東さんが何か……」
「あの人、院長の恩師の甥っ子とかで事務長とかやってる方で」

おっと、嫌ってる。
差島さん河東さんのこと嫌いなのか。

「こう言うたらなんですけど……いつもなんの仕事してはるんかわからへんというか」
「つまり仕事もせずにコネで上司になってる、毎日遊んで高給貰ってる人？」
私がそう言うと櫻井さんがブフォと吹き出した。

「そこまでいいませんけど、まぁはい」
「河東さんがどうされました？」
「あの方、独身なんですけども」

そうでしょうね、とも言えず、頷く。

「邨田くんに言いよってたみたいなんですよねぇ……」
「……邨田さんに……」
「はい。私恋愛は自由だと思いますし、そういうのはかなり理解ある方なんですけども、河東さんの恋愛対象は可愛い男性なんです」
「えっと、河東さんは周りにはカミングアウトされてるんでしょうか……」
「いえいえ、暗黙の了解というか……まぁみんな知ってはるんですけどね、でも今言いたいのはその話ではなくー」
「はい」
「河東さんかなり強引やったらしくて……困ってたみたいなんです……」

櫻井さんが、あああ、って困った顔をした。

「困ってた？」
「家の前で待ってたり、とか」
「……つきまとい……」
「はい。邨田くんも最初は河東さん河東さんってなついてたんですよ？ええ人やーって言うてご飯行ったり」
「……」
「でも実は邨田くんにも彼氏さんがいはって」

えっ！邨田くんに彼氏！
櫻井さんが、は？と心の中で大声で叫んだ。

「それを知った河東さん、もうめちゃくちゃ邨田くんを虐めたり、かと思ったらベタベタしたり……見てるこっちはほんまかなんわ……」

差島さんが首を竦めた。