〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ46)

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「え、そんな感じなの？」
「人にキャーキャー言われたいだけだから気にしなくていいよ」
「……」
「キラキラ笑顔のカッコイイ霊ってそんな聞かないでしょ？きっと死んでからキャーキャー言われたくなったんだよ」
「……あー、そういう……」
「人を脅かして注目されて何をしたいんだか……長居すると帰り道わかんなくなるのに」
「その部屋に泊まって……被害というか祟りとかはないの？」
「あると思えばあるし無いと思えば無い」

松本さんがこともなげに言った。

「前にも言ったよね？ばあちゃんに『お前はせっかちだから駄目なんだ、包容力ないからフラレる』って言われるのと、」
「うん」
「三年後お前にピッタリの女の子が現れる、イニシャルはAとか、ばあちゃん占い師でもない限りわかるわけねーじゃん、生きてても死んでても条件は同じ」
「へー……」

皆が松本さんの話をポー、っと聞く。

「祟りも同じ。生きてるときとできることは一緒。リストラにあったのも嫌がらせに遭ったのもアイツのせいってのと同じ」
「……ん？」
「リストラされたとするじゃん？それって誰かのせいかな？ほんとに？」
「いや、遅刻が多いとか仕事ができないとか性格に問題あるとか絶対本人にも原因あるよね」
「そうだよ、人のせいにしたらとりあえず自分の中で納得できるでしょ？霊のせいなんて一番楽じゃん、証拠ないし」
「……」
「霊には人権なんてないからね」

松本さんが苦笑した。

「話を戻すよ？」
櫻井さんが微笑んだ。

「何もなかった、っていうのはどういうこと？」
「うん、普通は病院やホテルにはね、多かれ少なかれ人の意志が残ってんの、普通はね」
「うん」
「廃屋とかでも、何ていうんだろう……澱んだ……昔そこに住んでた人の気配とか、獣の気配がするんだよね」

松本さんがなんと言えばいいのかなぁ、って首を傾げながら言う。

「それが何にもなかったんだよ、みんな隠れてるのかそれとも」
「それとも？」
「……」
「ん？」
「とりあえず、8時以降の病院を見てみないことには……」
「そうだね」

大野さんがちょっと笑った。

「今日は飯にしよっか」
「……」
「明日の夜から頑張ろ、今日はのんびりしよ」

「では予祝……大成功を祈って前祝いと行きますかね？ご飯運んでもらうようフロントに電話するね」
櫻井さんが立ち上がる。

誰ともなく、ふぅ、とため息が出た。