〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ39)

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「もうオフモードで打ち合わせでいいでしょ、Aものんびりしたら」
大野さんに言われた。

「確かにそうですね……」
「じゃあこっち座って」

大野さんが座椅子を勧めてくれた。
松本さんは私の横に、櫻井さんは真向かいに座る。
大野さんは櫻井さんの横の、真ん中に座った。

「揃ってないけど先に院長から聞いた話を二人に説明するよ、ニノと相葉くんはもう一緒に聞いてるから」
「うん」

櫻井さんが頭の引き出しの1つめを開ける感覚がした。スッキリ整理されてる。

「あの古い方の病棟が使われていたのは昭和5年から昭和32年まで、1957年以降あの旧館は放置されている」
「うん」
「新館ができたのも1957年。日本は戦後復興期を終え高度成長期に入り三年、団塊の世代が10歳位で、日本はもう戦後では無くなった頃ね」
「うん」
「関係ないけど32年年末にカラーテレビ実験放送開始。巨人大鵬卵焼きには少し早い、長嶋茂雄さんはその年に入団してる、大体どんな時代背景かわかった？」
「……うん」
一緒にいたはずの大野さんもへぇーとか言ってる。

「まぁ、なんというか……勢いだけはあるあの時期。ここは当時小児科が有名だったから患者も看護師もたくさんいたらしい」
「うん」
「しかし昭和30年に起こった医療事故を境にして病院に翳りが見え始める。決定的だったのは子供の死亡事故」
「……」
「オノマサトシくん、当時5歳。さっき少年たちを見た庭の奥に、昔は池があった。そこで少年が死亡しているのが発見された」

櫻井さんがそこまで言ってビールを一口飲んだ。はあー、って美味しそうにため息を吐く。

「少年は事故死だと断定された。何故ならその少年は普段からその病院で一人遊ぶ姿を目撃されていたから」
「弟が入院していたから、よね……」
「そう。鎌を持った男が子供を連れて歩くのを見た、という目撃者の声は、裏が畑だから農作業中の人と見間違えたんじゃないかと有耶無耶になった」
「……」
「病院の前で息子を返せと喚くおばあさんがいるというのは、その少年のお母さんらしい」

「会ったよ、あとで言うよ」
松本さんが言った。
「会った？じゃあその話はあとで。少年は殺人の可能性もあったのに事故として片付けられた経緯は今は一旦横に置く」
「うん」
「そういうこともあって、早急にその沼が埋め立てられた。ついでにムカデなどの虫の被害もあったから庭はタイルなどで舗装された」

櫻井さんがふう、と息を吐く。