〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ4)

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櫻井さんと目を合わせた。

……大野さんって俺らの心読んでない？

……うん、前からそんな気がしてた。

……こっちからは読めないのに。

……そう。今も、この事件面倒くさいなぁって表の感情しか聞こえない。

大野さんが私達をチラ、チラ、と見た。
「続けていい？」
「はい」

「でー、その病院はその政治家の実家なんだけど、新館を建てて、その横の旧館を取り壊そうとしたら霊が出た」
「鎌とか鉈を持った中年の男の霊？」
「うん」

「名前は鎌男でよくね？」
相葉さんがそう言った。
「え、カマオ？」
櫻井さんがぶふっ、と吹き出す。

「じゃあ美形の青年の霊は？」
大野さんが言う。
「そんなのもいるの？」
「いる、鏡越しに見えて、目があったら消える、特に害はないけど」
「じゃあミラーくんかな！」
相葉さんがきっぱり言った。

「鎌男とミラーくん」
「他にもいるらしいから、居たら名前つけてね相葉ちゃん」
「はーい！」

全然危機感ない。
相葉さんはペコちゃんのペロペロキャンデーのパッケージをぺりぺりと剥がして、ぱくっと口の中に入れた。

「では話を要約すると」
櫻井さんがメモを手に口を開く。

「現場は某大物政治家の実家の病院。旧館を取り壊したいがどうやら霊が邪魔すると相談があり、捜査に行った公安もお手上げ状態」
「うん」
「我々の活躍を耳にした大物政治家が管轄外の我々に捜査を依頼せざるを得ない状態、恐らく公安は渋々我々と手を組むことになる」
「そうそう」
「工事の邪魔をする霊現象は鎌男とミラーくん、他にもある？」
「うん。生きてるおばあさんもいる」

「生きてるおばあさんが邪魔するの？」
私の言葉に大野さんが頷いた。

「私の子供を返してー、って旧館の前に座って毎日毎日工事の進捗を見守ってる地縛霊みたいなもんで」
「地縛婆さんね、ジバアさんでいい？」
相葉さんがすぐにニックネームをつけた。

「いや、その人はオノさん。身元わかってるからニックネームいらない」

大野さんの返事に、二宮さんがニヤニヤしながら口を開く。

「鎌、鉈、と来て次はオノ、ノコギリさんとかカンナさんとか来るのかな！カンナさん美人だといいな！」
悪い顔だ。

「病院の旧館の写真とか見る？」
大野さんが松本さんにそう言って手渡す。

「……これ、戦前からあるやつでしょ」
「なんでわかるの」
「ここに軍服着た男の人映ってるよ、カメラ珍しいのかな」

松本さんがクスクス笑った。