〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ8)

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「……え」
「それだけじゃない、すこーしだけ読心術もあるよね、そんな強くないけど」
櫻井さんが更に畳み掛けた。

「いやいやそんな……え？」
救いを求めるように目を泳がせて、私とバチ、と目があった。

……あ、この人やっぱり零課にいたはったんや。
……私の未来、何か見えてるの？

心の中で問いかけたら、中間さんはめちゃくちゃ驚いた。きっと初めてしっかりと声が聞こえたんだろう。
ラジオの周波数が合う感覚というか。

「……もしかして、聞こえてます？」
「うん」

……病院内で、走って逃げてる姿が見えてました
……逃げてる？何から？
……それは、わかりません、すみません。けど、何でこんなはっきり聞こえるんやろ……

「それは意思のラインが繋がったってことだからだよ、俺とはちょっと周波数まだ合ってないみたいだから途切れ途切れ」

櫻井さんが私達の会話に割り込んでくる。

「Aの声は聞こえるのに中間さんの声は聞き取りづらい」
「え」

中間さんと櫻井さんがバチ、と目が合った。

……この人も、聞こえる人……？

……ライン見っけ。櫻井です、よろしくね。A？

……はい？

……え？え？

……三人で繋がった、これで後がとても楽になる、もういいよ。

一旦意思のラインを切ったら、中間さんがポカーンとした。

「無線機とか電話必要ありませんやん……めっちゃ便利ですねぇ……」
「でも離れてたら聞こえないんだよなぁ……」
「でも近くにいて変なこととか考えてたらバレバレですね、気つけよ……」
「変なこと？」
「Aさんって美人やなぁ、とか見惚れてたらうっかりバレるてことです」
「ハイハイ！思ってもないこと言わなくていいよ中間くん！」

櫻井さんがアハハハ！とか悪魔の表情で高笑いした。ぶん殴ってやりたい。

「やってみろよ」
「覚えときなさい」

「仲良いですねぇ、えっ！」
中間さんがバッと振り向いて二宮さんを見た。

「あなたも聞こえる人ですか」
「俺はなんも聞こえないよ、何となく表情で思ってることわかるだけ、多分伝えることもできるっぼい」
二宮さんが澄まして答える。

「ニノは発信のみ、受信できない」
櫻井さんが中間さんに説明してる。

「でも今、この人たちいつもこうだから放っといていいよ、ってはっきり言いましたよね」
「あ、ちゃんと聞こえてる」

二宮さんが嬉しそうにした。

「これじゃ、話進まない……」
係長がやっと声を出した。