〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ44)

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「黒……？どういうこと？説明して」
大野さんが私に聞く。

「あの人、最初から何か怪しかった、院長室の前で私達の会話を盗み聞きしようとしたりしてたし、挙動が不審で気になってたの」
「え？盗み聞きしてた？それで？何か心の声が聞こえた？」

櫻井さんの機嫌が治った。

「車の中で二宮さんが話を聞いたとき……つまり私が言い過ぎて係長に怒られたあと、二宮さんが冷静に質問してたでしょ？」

「うん、見たのはどんな霊か聞きたくて。だっていくら我々が警察とわかってても病院側の人間が幽霊騒ぎをあんなペラペラ喋るかな」
「そっか、変な噂はなるべく裂けたい側の人間だもんね？」
相葉さんが頷く。

「アイツ怪しいよ、なんか協力的すぎんだよな、俺ら探られてる感じする」
二宮さんが不快そうに言った。

「その二宮さんの感覚は正解だよ、可愛い感じかと思ってたけど怖い感じ、見透かされそうだから気をつけないと、って心が聞こえた」

「気をつける？何を？」
松本さんが私を見下ろす。

「わからない、けどたしか……私たちにバレないようにしないと。またあの手を使うか、とか思ってるのが聞こえた」

「あの手……って何？」
大野さんが私をじっと見た。

「わからなかった。けど、また仕込まないと、って……中間さんは可愛かったからつい手抜いたとも言ってた」
「……手を抜いて骨折？どういうこと？」
櫻井さんが吠える。

大野さんがふぅ、と息を吐いて言いづらそうに口を開く。

「京都公安の零係で、骨折だけで済んだの中間くんだけなんだって」
「……」
「5人いて、あとの4人が……一人は階段から落ちて足と腰を折って入院してー、一人は硝子降ってきて体中いっぱい縫われたって」

誰かのゴクリと唾を飲み込む音が聞こえた。

「もう一人は鎌らしいもので切りつけられて出血がひどくて一時は意識不明の重体、もう一人は精神やられて、仕事できないの」

二宮さんが立ち上がって全員のぶんのビールを持ってきてくれた。珍しい。

「あ、ありがと」
「ん。皆飲もうよ」
「……珍しいね、誘うの」
「こんなの素面で聞く話じゃないよ。……河東が黒でも一人でこんなことできるの？嘘でしょ」

みんなおし黙ったまま、ビールの缶をバシュ、と開けた。

「みんな生きて帰ろうね」

大野さんがサラッとそう言って、全員が目を見合わせる。

「じゃあ、今後はどう捜査する？決めていこうか」
櫻井さんがペンをくるりと回した。