〇≠無の証明Ⅳ－１ (ページ31)

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「食べたことあるん？」
「あるよー、学校帰りに、クサイチゴを食べたり、あとはグミの実とか食べたりしたよ」
「そうなんや！」
「ここの食べたの？」
「うん！めっちゃ甘いねんー」

少年たちがニコニコ笑う。
相葉さんもあはは、と笑う。

「君たちは学校帰り？」
「うん、学童の帰り！」
「ここでよく遊ぶの？」
「うん、けど、ここらへんだけ。奥にはいったらあかん。ってお母さんに言われてる」
背の低い少年がそう言った。

「どうして？」
「怖いおじちゃん来るよって」
「怖いおじちゃん？」

背の高い子がわたしをじっと見て、前に一人で入ったときに大人の男の声でコラァ！って怒られたことを言おうか迷ってる。

背の高い子、背の低い日の焼けた子。ぽっちゃりした子。あと何も話さない眼鏡の子。男の子たちがなんとなく目配せした。

物音がして後ろを見たら、また三人くらいの男の子が勝手に入ってきてる。
「やべ」

「君たちもよく来るの？」
相葉さんが新たに入ってきた子にそう聞いた。
子どもたちが逃げるのをやめて金網をくぐって近づいてきた。

「うん、西小の子はよく来る」
「西小？」
「うん」
「病院に入ったことはある？」
「ないよ、入りたくないもん」
「どうして？」
「幽霊病院やから。中に入ったら呪われるやん。ここまでは大丈夫やもん。知らんけど」

なるほど。敷地内に入るのは法的にまずいことはなんとなく理解しているけどビワやクサイチゴの誘惑や冒険心には抗えず。
病院の中に入るのは心理的に強い抵抗があるってことか。

「どんな幽霊？」
「お姉さん幽霊信じるの？」

あとから来た青いTシャツの少年が純粋な瞳で私を見た。

「いるとは思うよ」
「……」
「けど、見える人と見えない人がいるんだよ、私は見えないの、残念だけど」
「え……怖ない？」
「人間の方が怖いよ」
「あ、それうちのオカンも言うてた」
「そうだよ、人間の方が怖いんだよ？変な人に追いかけられたりしたらすぐおうちの人に言うんだよ？」
「はーい」

「あとは」
後ろから櫻井さんが来た。
子供たち皆が顔を見上げて櫻井さんをみる。

「例えばいじめなんかも、警察に相談窓口あるからね。味方は必ずいるからね。我慢しすぎちゃだめだよ」

櫻井さんが眼鏡の男の子の肩をぽん、と叩いた。
少年が櫻井さんを見上げる。

……なるほど。
この眼鏡の子、いじめに至らないレベルで揶揄われて遊ばれてる。

はぁ、とため息が出た。