こ ページ29
その日、二宮くんから連絡はなかった。
起きて私が居ないことに気づいて、きっと呆れて私のことを見限ったんだ。
月曜から一緒に仕事しづらい。
けどあのまま、眠ってる二宮くんを起こして、おはよ、とか笑顔で言える自信なんてこれっぽっちもなかった。
何度も何度もラインを確認して、そのたびに無言のスマホを見て、もう二度と二宮くんからの連絡はないと思ったら胸が潰れそうになる。
私から連絡すべきなの？
でも、なんて言うの。
二宮くんが男だから受け入れられないって？
そんなことないよ。
ほんとはもう私気づいちゃってる。
私二宮くんのことが好きなんだきっと。
たぶん。
わかんないけど。
でも、たった2日とかで好きになるとかありえなくない？恋っていうのは、もっと時間をかけて大切に育んで、気づいたらとても大切な人になってた、とかなんじゃないの？
一目惚れじゃないよね。だって初めて会ってからもう4年もたってる。
長い長い、週末を過ごして憂鬱な月曜が来た。
行きたくない。
のろのろと仕事に向かう。
会社の最寄り駅についた時、肩をぽん、と、叩かれた。
二宮くん？
慌てて振り返ったら、相葉くんだった。
「おはよ！」
「あ……おはよう」
「あれ？Aちゃん、ビクッとしないね！もしかしてやっと慣れてくれた？」
「あ……相葉くん、ごめん！」
「……ん？」
相葉くんが目を丸くした。
「どうしたの？」
「私今までずっと……相葉くんに……」
言葉が詰まった。
代わりにじわっと涙が出てきた。
「Aちゃん、え？どうしたの？ニノになんか言われた？」
首をふる。
なんで二宮くん？
「泣かないで」
相葉くんが私の肩を抱いて道路の隅の、まだ開いてない美容院の前に私を連れてきた。
通勤の人たちの邪魔になるから？
早く泣きやまなきゃ、と焦ると余計横隔膜があがっちゃって、声が出ない。
「どうしたの」
「私今まで、相葉くんのこと怖かったの」
「どうして？」
「イケメンだから」
「……は？え？俺がイケメンだから？あは！ありがとー、じゃないよね、何何？」
「……」
「どうしたの……」
「私トラウマだったの、大嫌いな奴に二宮くんがちょっと似てたせいで、勝手にそいつらと同じだろうと思い込んで」
「……」
「相葉くんは世界でたった一人の相葉くんなのに。誰にも似てない相葉くんなのに」
目をあげたらキラキラのスーパースマイルで私を見下ろす相葉くんと目があった。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
