ざ ページ20
誘われたら2軒目に行ってもいいかなと思ったのに、二宮くんは終電の一本前に間に合うように駅について、一緒に電車に乗る。
終電間際の駅は結構混んでる。
ぎゅうぎゅうではないけど、つり革を掴めない程度に満員だ。
自然に二宮くんとの距離が近くなって、週末どこいきたい？とか言ってたら、酔っぱらいが私の背中にぶつかってきた。
つり革持ってるけど、寝てるみたいで、電車が揺れるたびに私の背中に背中が迫ってくる。
二宮くんがそれに気づいた。
「A」
二宮くんが私の肩を抱いて体を引き寄せた。
ふわっと抱きしめられるみたいな形になって、ドキッとして目を上げる。
「やぁね、酔っぱらい」
二宮くんが、んふ、と笑って私と体を入れ替えた。
びっくりした。
びっくりした。
二宮くん細くてちっちゃいとかおもってたけど、まるーくなってるからで、肩幅はちゃんとあるし意外と腕の力も強い。
「ん？」
二宮くんが視線を落として、私の目を見て、あは、って笑った。
笑顔が可愛くて頭がくらくらする。
なんだろ、この感覚。
酔ってるみたいな。
「ん。いいよ、つかまってても」
……あわわ！私、びっくりして二宮くんのジャケットしっかり握ってた！
「ごめんね！」
慌てて離す。
「A可愛い」
二宮くんがささやくみたいに言った。
膝の力が抜けるような気がして踏ん張る。
「やだ……」
「見た目が男でごめんね？気持ち悪い？」
「二宮くん、電車の中だから……」
人目を気にして声のトーンを落とす。
「んふ、そだね、ここじゃアレか」
二宮くんが、ずっと笑ってる。
楽しそうでいいけど、なんか変なの。
「じゃあ、二人きりになれるとこ行く？」
「ぶふー！」
二宮くんが完全に吹き出した。
「ん？ん？」
「Aが男嫌いでほんっと良かったよ、なんかありがとう木下」
「どういう意味よ！」
「こっちのこと」
二宮くんが、楽しそうにニコニコして、私をじーっと見た。
「俺ね、ボーナスが出たら新しい本棚とか家具見たいから、下見ついてきてよ」
「わーい、行きたい！」
「ランチして家具見て、……他は？」
「夏服見たい！刺繍のワンピ欲しいの！」
「選んだげるよ、映画も見たいなぁ……」
「じゃあそれはその次の時にしよ？私はね、パンダ見たい、見たことある？」
「あるよ、たそがれパンダの写真撮った」
「たそがれ？みたい！」
「うちくる？」
「うん！」
二宮くんが、困ったように笑った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
