う ページ12
ソワソワの打ち合わせが終わった。
打ち合わせ中も、二宮くんは相葉くんを本当に幸せそうに見つめていて、こっちまで胸が痛くなってきた。
二宮くんにお疲れ様でした、と言って営業部に戻ろうとしたら二宮くんが私のシャツの肘あたりを指でくいっとつまんだ。
「ん？」
「ちょっと話したいんだけど」
「さっきの話？」
「うん。一緒に帰ろ」
「いいよ？何時に終わる？」
「俺は8時位までかな」
「私は戻ってきたら8時過ぎると思う、今からちょっと出るの」
「ホントは直帰だった？」
「いいよ、気にしないで」
「じゃあ……待ってる……」
可愛いな。
二宮くんが手を離す。
ん、と、笑って手を振ったら、後ろから相葉くんが追いかけてきて私の肩をぽんと叩いた。
振り返って相葉くんの顔を間近で見て、びくううう！って体が縮んだ。
大川！って体が拒否反応を起こす。
「ニノには触られても平気だったのに！」
「二宮くんはちょっと事情が変わったの！」
「ええ？あんな短時間で好きになったとか？」
「そんなわけないでしょ！」
「じゃあなんで？」
「ちょっとね」
「あやしい……」
「怪しくないよ」
いいなあ、とか、ずるい、とか言ってる。
「ねえ、相葉くん」
「ん？」
「相葉くんってさ……今、好きな人いるの？」
「えっとね、Aちゃんかな！」
「まじめに答えてもらっていいかな」
私が鳥肌の腕をさすりながら聞いたら、相葉くんが、まじめな顔をした。
「答えたらなんとかしてくれんの？」
「……え」
「助けてくれんの？」
「……私にできることなら……」
「じゃあ、奪ってきてよ……」
「……」
息を飲みこむ。
まさか。もしかして。
「パートナーがいる人なのかな」
「うん。旦那さんがいる」
ああ、余計な事聞いちゃった。
「……そっか」
やっとの思いで声を出したら、相葉くんがぶふ、と吹き出す。
「とかだったらどうする気だったのよー」
「え」
「だから、もしそうだったらこまるでしょ、って」
「……え？」
「なんてね、嘘だよ！あーおかしい、Aちゃんって素直だからすぐ騙せそう！なんでもすぐ人の言うこと信じちゃだめだよ！」
「……ハ？」
「わー、怒っちゃダメ」
相葉くんがあはは、って笑って、営業部に、もどりましたーって言いながら入って行った。
びっくりした。
何だ、冗談だったの？ひどい。
でも、さっきの顔。
ほんとに嘘だった？
初めて相葉くんが知らない人に見えた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2017年6月17日 4時
