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「じゃ、いってくるね」
「あらあら、相葉くんのお家に電話しといたほうがいいかしら」
「お店に？迷惑だよ」
「それもそうねぇ」
「いってきまーす」
何事もなかったかのように家を出て行くおにいちゃんを見送ったら、お母さんは洗濯物を片付けに部屋に戻った。
立ちすくんだまま動けない私を見て、お父さんが私の頭をわしわし、と撫でる。
思わず、その手を振り払ってお父さんを睨む。
「お前はほんと……」
「……」
「見る目あるよ……」
「え？」
「和くんはいい子だな」
お父さんがちょっと老け込んだみたいに肩を落とした。
「どういうこと？」
「いつかわかるよ」
お父さんが、私を見下ろす。
「何が？」
「子供だ子供だ、と、思っていたけどね……お前も大きくなったなぁ」
「……」
「17歳は、俺と佳那子が出会った歳だもんな」
お父さんとお母さんが出会った歳？
「……17歳？お父さん、一つ上だったよね」
「うん。大学卒業して……すぐに結婚して……」
「……」
「なんか、いろいろ思いだすよ」
お父さんに何か言おうとしたけど。
もう、何も言葉なんて出てこなくて。
「……和くん、なんか言ってたか？」
「何も……」
「お前のこと、ほんとに好きなんだなあ」
「どういうこと？」
「……男と男の約束」
ため息を吐いて、お父さんが部屋に戻っていく。
そうだ、電話！
部屋に戻って慌てておにいちゃんに電話をかけたら、つながらなかった。
ラインも既読にならなくて、メールも戻ってきた。
……拒否されたんだ。
そう気づいて、血の気が引いた。
慌ててリビングに降りていく。
おばさんは、お風呂に入ってるみたいだ。
声を潜めてお父さんに詰め寄る。
「お父さん！おにいちゃんと連絡がつかないよ」
「……」
「ねえ、何言ったの？二人でなんの話をしたの？」
「……別れる気はないのか？と言った」
「まだ付き合ってもないのに？」
「……もう二人きりでは会いません、って和くんが言った」
「嘘！」
堪えてた涙が、ポロポロ零れた。
「お父さんひどい……」
「……」
「ひどい……」
どうして？
どうして好き同士なのにだめなの？
おにいちゃんもひどいよ。
あんなに優しくて、あんなにたくさん抱き合って、いっぱいキスして。
初めて会った時から、好きだったよ、って。
これからもずっと、大好きだよって言ってくれたのに。
『それだけは、絶対、わすれないでね』
そう言った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
