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「やだ！」
「A、お願いだから」
俯いたまま、ぶんぶんと首をふる。
「おにいちゃん、行っちゃやだ」
「Aお前」
お父さんのオロオロした声がした。
「お父さんお願い、私おにいちゃんの傍にいたいよ」
「……」
「A、あっち行ってて？ね？」
おにいちゃんが、ふふ、って小さく笑ってそう言った。
「おにいちゃん、私は関係ないなんて酷いよ、あたしだっておにいちゃんのこと好きなのに！どうしてそんなこ……」
「A」
おにいちゃんが、鋭い声で私の言葉を制した。
ぎし、という音がしてお父さんを見たら、頭を抱えて眉間にシワを寄せて、黙り込んだ。
「二人共、同じ気持ち、ってことか」
「……」
小さな沈黙の果てに、おにいちゃんが、ポツリと言った。
「Aさんが火傷したのを見て、思わず自分の気持ちを伝えてしまいました。そしたら、Aさんも、同じように思ってくれていました」
「……」
敬語で話してるおにいちゃんを見て、絶望した。
もう関係は修復されないし、親子には戻れないという決意に聞こえた。
「もう一度聞く、お前たち体の関係は」
「気持ちを伝えたのは火傷した時。傷が痛くて辛そうにしてるAさんに手を出せると思いますか？」
「……」
「無理だよ、だって俺Aが好きだもん」
ふぇ、って変な泣き声がでた。
おにいちゃんがスッと立ち上がって、私の前に来て部屋から出そうとした。
「あっちいってて？」
「おにいちゃん、どこもいかないで」
おにいちゃんにしがみついたら、私の手をゆっくり解いた。
「……ほら、お父さん、無理だと思わない？俺がAの親父なら、絶対俺に出てけって言うよ、俺ならそうする」
「……」
「だってAは初めての恋に浮かれてるだけで、何しだすかわからないもん」
お父さんがおにいちゃんをふと見上げた。
「だから……？」
「短い間でしたが、お世話になりました」
おにいちゃんがお父さんに頭を下げた。
「この恩は、いつか必ず返します。お父さんからAさんを無理矢理奪うこともしません、お父さんの命より大切な宝なんだから」
「……」
「それだけは、誓います。……母を、よろしくお願いします……。それと、俺の一番大切な子を……怒らないで」
おにいちゃんの目がキラキラと光った。
「悪いのは俺だよ、ずっと好きだった子が妹になったのも、俺前世で絶対なんか悪いことしたんだと思う」
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
