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ピンポーン、と家のチャイムがなるまでこの世の終わりみたいにくっついてて。
慌てて体を離して、玄関まで迎えに行く。
おにいちゃんはソファに座って、何事もなかったかのようにテレビを見た。
「おかえりなさいー」
「ただいまー……」
私がそう言ったら、おばさんがニコニコしながら私を見て、表情を強張らせた。
「……ん？」
「……和は？」
「テレビ見てるー」
「何か変わったことあった？」
おばさんの探る目に、一瞬、怯える。
「何かって……」
「……」
「A、手、どうした？」
お父さんが私の腕を見て眉を寄せる。
「火傷しちゃってー」
「やけど？え？大丈夫なのか？」
「うん、病院行ったよ、色素沈着は残るかもだけど、ケロイドにはならないって」
「何してて？」
私と話しながらリビングに入ったらおにいちゃんが、首だけくるんってむけて、おかえり、って言った。
おにいちゃんと視線が合った。
おにいちゃんが、苦笑いをした。
すき。
多分私の目が勝手にそう言ってるんだろう。
おばさんが今度はおにいちゃんを見て、私をもう一度見た。
複雑な表情でひとつため息をはいてから、やっと火傷のことを聞いてきた。
何か、気付かれた。
なんとなく、鏡の自分を見てギョッとした。
……誰。
……これ、わたし？
酷く悲しそうで、頬の色がなくて、
でも目はキラキラしていて、唇は赤くてつやつやしていて
一目でわかる。
わたし、恋してる。
「腕が痛くてあんまり眠れなくて」
慌てて、言い訳をした。
「……それで？なんか……元気ないなと思って……何かあったのかと」
おばさんは、何かに気づいた。
ーーお母さんには嘘ついてもすぐバレるんだよね、味方にしちゃったほうが楽
メグちゃんがそう言ってたことをふと思いだす。
ひとしきり、火傷のことと、おみやげ話を聞きながら、お蕎麦をとって四人でご飯を食べた。
どうしてもどうしても、おにいちゃんの存在が気になって、あんまり見てるから、おにいちゃんが私の足をトン、と蹴られた。
居心地悪い。
「シャワー、浴びてくるね」
おばさんが台所に行って、私が立ち上がったら後ろから、おにいちゃんがお父さんに声をかけるのを、聞いた。
「おとうさん、ちょっと、話があんだけど」
「なんだ？」
「ちょっと……男同士で話したい」
「ん？」
「大事な、話」
なにをいうんだろう。
振り返って見たおにいちゃんの。
……愛おしい、背中。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
