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嘘みたいに幸せな気持ちでハッと目が覚めた。
おにいちゃんの腕の中で少し眠ってたみたい。
なんて幸せな二度寝。
お腹空いたなぁ、って思ってなんとなく時計を見たら8時になってる。
ご飯食べて薬飲まなきゃ。
起き上がろうとしたら、おにいちゃんの目が覚めた。
「ごはん……」
「ごパン？」
「うん、ハムエッグ？コーヒー？」
「ねぇ、もうしばらく火使うのやめてよ、あぶないよ」
おにいちゃんが、過保護になってる。
「え？でも」
「俺が作るよ」
「私がつくるのー」
「やだよ……」
「とりあえず起きようよ……」
「どうぞ？」
「じゃあ、せーの、で起きよっか！」
私がそう言ったらおにいちゃんが、フフ、って笑った。
「じゃあいくよー、せーの！」
「はいはい」
おにいちゃんが私を支えて起き上がって、私を抱き起こしてくれた。
「らくちーん」
「だるぅ」
ふと目があったら、おにいちゃんの髪がボサボサになってる！
「おにいちゃんボサボサー」
「お前もボサボサだよ……」
ふふーって笑ったら、おにいちゃんが苦笑した。
さっきからずっとこんな感じだ。
二人で並んで歯を磨いて、ふと目が合うと、おにいちゃんは、ぐふ、って笑った。
「……んー？」
「んふ」
なんだろう、ずっと目が合うたびに笑ってる。
座っとけ、とかやいやい言われながらパンを焼いてハムエッグとレタスとトマトをおにいちゃんが飾って、コーヒーを淹れた。
向かい合わせに座って、また目が合ったら、おにいちゃんが、また口元を腕で隠すみたいに、笑った。
「なあに？」
「あ、病院何時に行く？」
「12時までに入らなきゃだからー」
「じゃあ、10時くらいに出よっか」
ついてきてくれるのかな？
嬉しい。
「……ありがと……」
「……ん？」
パンを齧りながら私をちらっと見返した。
その仕草がなんだか、好きだなあって思って、なんだか笑いがこみ上げた。
「なに？」
「うふ」
おにいちゃんも、笑った。
知らないことだらけだよ。
好きな人が私を好きって、そうおもうことがこんなにも世界をキラキラに変えるなんて。
まるで、もう何も怖くないみたい。
あなたがいればそれだけでいい。
それだけで、どこまでも強くなれる気がするし、優しくなれるような気もする。
「おにい……先輩、」
「んー？」
「……すき」
「はは」
もぐもぐ。
「……なんか、幸せで怖いよ俺」
しばらく黙っていたおにいちゃんが、舌っ足らずの甘い声でそう言った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年5月31日 0時
