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やっとの思いで電車を降りた。
早く家に！って気持ちでいっぱいな私は変態かもしれない。
「スーパー寄ってく？」
「時間が惜しい」
「櫻井くん」
一緒だ。
家までの距離がもどかしいとか、私は高校生か！
昨日のこの突っ込みしたな。
床に押し倒されて……。
ううう。思い出すな。体が熱い。
「櫻井くん……」
私の手を引っ張って、私の前を歩く櫻井くん。
歩くの早い！
「早いよ……」
「走り出したいの我慢してるくらいなのに」
「どうして……」
「だって……わかるでしょ？Aさんが泣いちゃうくらい好きな相手は俺なんでしょ」
てへ。
バレるってほんのり気まずいけど、好きな人に暴かれるのって快感。
「すき、って言ってもらう」
「え！ちょっと！そういや私知らないよ、櫻井くんが私のことどう思ってるか聞いてない！」
「好きだよ、Aさん」
「……えへ」
えへ、じゃねーよ私。
櫻井くんが、照れてる私をちらっと見下ろして、すうっ、と息を吸い込んで、夜の空を見上げた。
なに！
「Aさんが好きだ！好きだ好きだ大好きだ！Aさん！」
なんつー大声で！
通行人がチラッとこっちを見た。
「ひー！」
「はー、スッキリした」
「……スッキリじゃないよ！」
「今どんな気分？」
「早く家に帰って穴掘って埋まりたい」
「だから家に急いでんの！」
どうしよう。
全力で大好き攻撃されたらどうしよう。
明日の朝抜け殻になってるねきっと。
明日の朝？
「泊まるの？」
「とうぜんです！」
「着替えとか……」
「ネクタイの替えは持ち歩いてます、靴下も災害の時帰宅難民にならないように替え持ってます、問題はパンツだよなぁ」
「……」
「ま、いっか。一日くらい変えなくても死なないよね」
「今コンビニに行けばいいんじゃ……」
「何それ焦らすつもり？」
「……」
給湯室から始まって電車の中と今と、もう既に言葉攻めされながら焦らされてる状態で、
なんだAさんもその気なんじゃん、ってことになる予感しかない。
さっきの好き好き攻撃がもうすでに足に来てるんだもん、どうしてくれる。
「……そっちの方が好き？」
「……はぁ？」
「可愛いの好きなんでしょ？でも可愛いだけじゃ頼りないって思ってるんでしょ、課長みたいなのがタイプなんでしょ」
「え？え？」
「Aさん、俺のこれくらいの前髪の長さ好きなんでしょ？このネクタイも結構好きだったよね？」
そう言ってシルバーグレーのネクタイを見下ろしてる。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
