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このゴリゴリくる感じはなんだ。
我が人生最高の春のはずなのに不安で怖くて仕方ないのはなんなの！
すっごい見られてるし……。
あ、そうだ！
「そだ、櫻井くん」
「ん？」
「今日はありがとう」
「何が」
「クレームの件だよ」
「ああ」
櫻井くんが苦笑いした。
「俺はAさんの前にスッと立ち塞がって守ることできませんし」
「でも、ちゃんと守ってくれたよ……」
「早くAさんより上司になりたい」
「すぐなれるよ……」
今日の本部長の目は、櫻井くんに惚れた目だったもの。
「顎で使いまくりますから覚悟しとけ」
「おお、最低なこと言ってる」
電車がだんだん混んできた。
櫻井くん近い。
抱きしめられてるかのような！
「もうちょっと離れて」
「Aさん」
「なに？」
「……」
ううう。
この表情は。
キスしよっかなぁ、みたいな！
「A？」
はう。
早く自分ちにつけ！
勝手になんか色々期待してドキドキしてて、ここ電車の中よ！
まずいよ。
「も、ちょっと……」
「耳赤いよ」
「……」
「Aさんってポーカーフェイスなのにさ、テンパっちゃってたら耳、赤くなるよね？」
「……そうなの？」
「熱いでしょ、耳」
つり革に捕まったまま、唇を私の耳に寄せて一瞬だけ触れた。
「可愛い」
「……」
なにー！なにこの甘い感じー！
電車の中で腰が砕ける。
「どうしたの？」
耳に囁かれて、もうダメだ。
体がきゅううと音を立てた。
「はぁ、も、やだ」
「……色っぽい声出すのやめて」
ちょっと早く電車から降りたい！
隣のおっさん、これ何か始まるんじゃないの？ってワクワクしてるよ、この顔。
「櫻井くん、ちょっと……」
「ん？」
もう殆ど抱き合ってるのと同じ距離感でしかもこんな電車の中とかで囁かれたら。
「はぁ……」
櫻井くんのため息が耳に。
ぞくぅ。
やば。体が震えた。
「……」
櫻井くんの親指が私の唇を、そおっと、なでた。
「どこでもドア……」
「え？」
「欲しい、早く電車から降りたい」
ぐふ。
かわいい。
「もう着くよ」
「うん」
なにこの一瞬でも早く二人きりになりたい、みたいな感覚。
それを！あの！櫻井くんが私に対してそう思ってるってことが。
私死ぬのかしら。
全部のラッキー使い果たしてるんじゃないの？
「何考えてる？」
「幸せ過ぎて死にそうだな、と思って」
「誰が？」
「私」
「……俺のこと言われてんのかなって思った」
ははっ、て小さく笑う。
それって。
頭がクラクラ。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
