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また春が来た。
櫻井くんは、入社4年目。
ちなみに私は入社してきて丸6年がたった。
なんというあっという間の6年間だったんだ。
この勢いじゃ7年目もあっという間なんだろう。
28歳。
今年で29歳……。
彼氏いない歴……4年っ？
なっが！
男と別れた時、朝まで飲みに付き合ってくれたのは同期の大野くんと松本くんだった。
松本くんは能力を買われて、今はロンドン支社にいる。
日本に帰ってきたらいきなり次長クラスの待遇だろう。
この前写メとか送ってきてたけど、オシャレすぎて、これなんのグラビア？って大野くんと笑いあった。
こんなオシャレハット被って仕事行ってんの？っておかしくて。
うひゃひゃ、って笑ってる大野くんは間違いなく次の係長だ。
わたしは？
女は結婚するから、とか言われてここで頭打ちだなきっと。
玉の輿、乗るより作りたいのにな私。
そう思いながら久々に松本くんのグラビア写真を眺めてたら、背後からひょい、と覗くような気配がした。
「おおー、松本くん」
大野くんの声。
振り返ったら、画像を見てふにゃあ、って笑った。
「帰ってきたら次長クラスだろうなって思ったらなんとなく顔を見たくなった」
そう言ったら大野くんが、もういいかな、って呟いて、私に『係長の内示出た』って小声でヒソヒソ話した。
「え！おめでとう」
「ありがとう」
同期がふたり顔をくっつけてヒソヒソ話。
「今の係長は何になるの」
「課長」
「課長は？」
「ロンドン支社の支社長。あの人英語完璧だもんね。元々希望してたし」
「えっ！」
思わず大きな声が出た。
「ん？」
「やだ！」
「しょーがないでしょ」
課長がいなくなる？
やだ。
課長の席を見る。
今日は不在だ。
「いつ辞令出るの？」
「明日かな？」
「……あした」
「来週にはあっちだねえ」
血の気が引いた。
私がどれほど課長を頼りにしていたんだろう。
衝撃で頭が真っ白になった。
両手で頭を抱えこんだら、携帯がかしゃん、と落ちた。
「あ、チーフ大変、携帯が」
櫻井くんが通りかかって、携帯を拾い上げる。
「……」
チラリと画像を見た。
「俳優さん……？」
「同期だよ、ありがとう」
「同期？」
「松本くんだよ」
「……松本さん。ロンドン支社の？」
ロンドン。
じわあっ、と涙がこみ上げた。
「え？」
「ごめん、手洗ってくる」
慌てて立ち上がってトイレに向かう。
「女心は難しいねぇ」
大野くんの声がした。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2016年3月29日 21時
