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「気管に？」
「唾液が」
「ばーか！」
あれ？なんだこれ、夢か？
でも気管がちょっと苦しいから夢じゃないな。
「……付き合ったら殺されても文句言えないですよね、幸運で。罰当たりレベルの」
「お前にとって俺はなんなんだ」
「王様です！」
「バカだ」
うははって笑っていらっしゃる。
「ま、とりあえず……周防さんには諦めるように、友達経由で伝えとくから」
「……はい……」
「気をつけろよ？」
松本さんが素敵過ぎて辛い。
「はい……」
「……今度、飯でも行こうな」
社交辞令だ。でも。嬉しい。
「ありがとうございます、楽しみにしてます」
「ん。じゃあ」
「はい」
「おやすみ」
おやすみ？
すごい！
おやすみだって。
もう永遠に眠りにつきたいよ。
「おやすみなさい……」
ふ、と笑い声が聞こえて、切れる。
松本さん。
ほんとにいい人で、困る。
どんどん好きになる。
もう、これ以上、好きになりたくないのに。
嬉しいと思う自分が嫌で泣けてくる。
しかも社交辞令だと思ってたのに、ほんとに再来週の土曜あいてる？とか連絡があった。
『そんな先のことまだなんにも決まってないから空けときます！』
ってメールしたらニコニコ笑ってるような絵文字と、よろしくね。ってメッセージ。
松本さんのメールはなんか可愛い。
どきどき、そわそわの日々。
針のむしろは続いてるし、週に一回は周防に合う羽目になるし、泥棒猫扱いはまだ続いてるし、ろくなことないけれど、
でも、会える。
嬉しくて、ごきげんな私にももちゃんが苦笑い。
こんな状況で幸せそうな私が異常らしい。
やっと迎えた当日。
髪を綺麗に整えて、お友達の中に入っても恥ずかしくないように可愛い服を着て待ってたら松本さんから電話がきた。
「はい？」
「後ろ」
振り返ったら、かっこいい車に乗った松本さんがウィンドウを開けて小さく手を振った。
「あ！」
「乗ったら？」
「いいんですか？」
「申し訳ないけど後部座席ね」
後ろの席に乗り込んだら、車の中は内装もかっこよくて、いい香りがした。
松本さんがくるりと振り返って、ニッコリ笑う。
「ドライブ行かね？」
「……え？お友達は来ないんですか？」
「今日は二人きり、嫌だったら家まで送るよ」
「嫌なわけない……」
「じゃ、付き合ってよ。たまにはこいつも可愛がらなきゃね」
松本さんがハンドルを愛おしそうに撫でた。
車が羨ましい。
そんなことを思って、苦笑い。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年10月13日 10時
