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針のむしろの上の、毎日が始まった。
みんな何を聞いてるのか分からないけど、酷いとか、いや元はといえば可哀想なのはAさんだろう、とか変な噂で皆腫れ物に触る扱い。
一ヶ月が過ぎて、周防はまだ別れては居ないけど修復不可能なとこまで来てるとかいう噂が流れてきた。
私のせいらしい。
周防は吹っ切ったのか、私を会社の前で待つ日もあった。
「ストーカー！警察を呼ぶわよ」
とか言って、待てよーみたいな。
『泥棒猫』ってこそこそ言う奴も出てきて、私を好きなら来るなって周防に言ったけど、しらんぷり。
ああ、もうやだ。
うんざりしてた、ある日。
松本さんから、携帯の着信があった。
うそ。
あの初めて会った日。
『ありがとうございました
おやすみなさい』
とだけメールをして、そのあとはもう忘れようとしてたところだったのに。
ドキドキしながら掛けなおす。
出ない。
ホッとしたような、残念なような複雑な気持ちで居たら、夜寝る前にまた電話がかかってきた。
どうしよう。
どどど、どうしよう。
とりあえず、出なきゃ。
「はい、……もしもし」
「……松本です」
「ご無沙汰しております」
「そうだね、久しぶり」
「はい」
ちょっと戸惑ったようなギクシャクしたような、空気。
向こうから、大きなため息が聞こえた。
「なんで連絡してこない」
「……え？」
「困ったら連絡してこいって言っただろ」
「言いましたけど……困ってない……」
「はあ？お前俺のネットワークなめんなよ？」
ああ、なんか怒っていらっしゃる。
「お前がストーカー被害に遭ってるってきいたんだけど？」
「ストーカー？ああ、周防に？」
「なんでそんなことになってんだよ」
松本さんが、イライラしながら、そういった。
「だって」
「なぜストーカーを許してんだよ！」
「許してないよ？」
「お前が周防さんと話してるとこ俺の友達がみたんだけど？」
「……」
「ちゃんと断れよ……」
ああ、呆れられてる。
「でも、元彼だし……」
「ストーカー殺人事件のほっとんどが元彼だろ！」
「あいつが私を殺すわけな……」
「わかんねーだろ。お前元彼に襲われるわけないって思ってたからあんなことになったんだろ」
「……」
「警察に言えば？」
「でも……」
「でも、じゃねーよ！」
「……」
「なにやってんだよ、お前……」
松本さんが、大げさに、はああってため息を吐いた。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年10月13日 10時
