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針の筵の午後を終えて、いつものカフェに行ったら、周防が一人でいた。はなしが違う。
けどまあいい。
ももちゃんと並んで周防の前に行ったら、周防が言った。
「俺の友達は遅れるから。座って。晩飯食ってないならなんか頼めば？」
ももちゃんがやけくそになって、ちょっと高めのステーキを頼んだから、私もパスタを頼んで周防を見た。
目があったら嬉しそうに微笑んだ。
「話ってなに」
「謝りたくて」
「……」
はぁ。ため息が止まらない。
別に謝って欲しいわけではないんだけど。
まぁ気が済むならどうぞ、って感じでため息を吐いた。
「あいつとは多分離婚することになる」
「じゃあ結婚すんなよ！」
ももちゃんが思わず突っ込んだ。
「子どもができたと言われたら仕方ないだろ？俺の子かもわかんなかったけどさ？それでも可能性はあったわけだし」
「やることはやってた、ということね」
「まぁ、抱いてくれなきゃ死ぬとか言われて……」
「勝手に死なせとけばよかったのよ」
ももちゃんが代わりに話してくれてて助かる。
「つい魔が差した、というか、可哀想になってきて……」
「可哀想？」
「俺を見てるような気になってきてさ……」
「……」
「すげー惚れてんのに、ずっと片思いしてるような状態、というか」
「……周防さんが？誰に対して？」
「Aにだよ」
周防が苦笑いをして、私をじっと見た。
「え、わたし」
「そうだよ」
「わたし？付き合ってたのに？」
「お前は付き合ってんのに俺の事全然好きにならなかっただろ、付き合ってからもずっと」
「……」
「だから……つい、優しく接してるうちに」
やっぱり、私のせいだと言いたいんだ。
わかってるよ。
わかってたよ。
私のせいだってことはわかってたよ。
「ごめん、謝って許されるとは思ってないよ、けど俺がずっと愛してたのはお前だけだよ、それだけ言いたくて」
「……」
「軽蔑されるの覚悟で聞くよ、俺の事、少しは好きだったのか聞きたかった、ずっと」
ももちゃんが、ああ、最低だなこいつ、って顔で周防を見てる。
「好きに決まってるよ、じゃなきゃ結婚しようって言われて、ハイとは言わない」
「……」
「よかったね、予約した式場が……無駄にならなくて。離婚せずに幸せになってよ」
ももちゃんが、そうだったの、って絶句した。
「よりを戻す気は」
「ありません」
「だよな」
周防があはは、って笑った。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年10月13日 10時
