Ａ’ｓ ＲＯＯＭ ページ2
「はーい、今あけるね！」
マンションのエントランスに続く扉が開かれた。
膝がくがく。
だけど、相葉くんの顔を思い出したらどうしても頬がゆるんじゃう。
部屋の前まで行って、ピンポーンって押したら、
すごい勢いで扉が開いた。
「待った？」
「待ってない！待った？」
「俺も待ってない！」
「じゃあ、おたがい待ってなかったんだね！」
「じゃあいっか！」
「うん！」
なんだ、この意味のない会話！
「どうぞ！」
相葉くんのお部屋に入って、膝のがくがくを隠そうと頑張ってみたものの。
「だめだ」
心の声が漏れた。
「なにがダメなの？」
くるん、と振り返って私を見下ろす、私の彼氏。うふ。
「あのね、私、からかわれたのかなとか、思っちゃって」
「なにが？」
「俺らつきあおっかー！って軽く言われたの、あれ本気だったのかなってこの一週間けっこうマジでもやもやしてたの」
「うっそ！俺超どっきどきで言ったのに？ひっどー！Aひっどー！」
あはははははって笑ってる顔を見て、ちょっとホッとした。
「ほんとだったんだ」
「あったりまえじゃん、なんで？俺そんな風に見えたんならちょっとショックかな、ちょっとだけね？」
ソファにすとんっと座って、こっちおいでーって言う、相葉くん。
ああ、さっらさらな髪が今日はヘアバンドみたいなので上に上げてる。
「だって……」
「んー？」
キラキラの目が私を覗き込んでる。
ああ、あひるみたいな口。
ああ、どうしよう、言っていいかな、いいよね、言う。
「ずっっっっっっっ」
「ずっ？」
「っっっっっと、好きでした！」
「そんなに？」
「え？まだいつからか言ってない！」
「いやいや、そんな、ずっっっっ、って溜めるくらい？」
「こんなんじゃ全然足りない」
「あははー！どんくらい？」
「でも、あれでしょ、やっぱり、……」
「……ん？」
「ファンとはお付きあい出来ないって聞きました！」
「そりゃあ、そうだよ、ファンに手をつけるなんてゲスだよ、ゲスの極み！」
うっひゃひゃひゃって笑ってる、笑ってる！
「私相葉くんのファンなんですけど！」
「あ、そうなの？いつも応援ありがとー！ＦＵＵＵ！」
「もしかして、酔ってます？」
「ちょこっとね、ちょっとー！うふー！」
にいいって笑いながら、親指と人差し指で短い空間を作ってその間から覗いてくる黒目がちのきらきらな目。私を殺す目。
死にそう。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年7月31日 19時
