プロローグ(全話共通) ページ1
『明日夜からうちに来たら？』
という彼からのメールを何回も読み直してほとんど一睡もできなかった。
つまり、え？
つまり、これは
お泊りってことでは？
彼との出会いは、半年くらい前。
付き合いだしたのは、先週くらい。
忙しくて全然会わなくて、もしかして付き合うってコトになったのも嘘だったのかしらって思い始めていた週末の出来事。
『待ってるから。仕事終わったら、おいで』
前日に、もう今更どうしようもない体重の問題とか、
下着を買いに行ったりだとか、あとは大事な無駄な毛がないか確認したり、
私的に大忙し。
ドキドキしながら過ごした勤務時間。
仕事なんて手につくはずなかろうて。
晩ご飯どうするんだろう。
絶対食べてくるよね、お仕事だって言ってたし。
でもなんにも用意しないのはちょっとアレよね。
アレってなんだ。
困ったぞ、これは困った。
調理道具あるのかしら。
元カノが置いて行ったやつとかあるかな、
……元カノ。
どーん。
勝手に落ち込む。
でも今は私が彼女。
と、いきなり浮上。
ってコトは、あの人は、……私の彼氏？
私の、私の彼氏！
ああん、なんて素敵な響きなの！
ぐふ。
ぐふぐふ。
「Aキモチワル」
同僚のももちゃんに見られて白目。
「すまない」
「……」
「ちょっと思い出し笑い」
「思い出すのやめてね」
え？そんなキモかった？
気をつけよう。
キリリ。
でもすぐに、ぐんにゃり。
ああ、どうしよう。幸せ。
幸せすぎてこわー！
仕事を終えて、念入りに化粧をなおして、まるで旅行か？ってくらいの大きな荷物を持って。
いざ！彼の元へ！
どきどきどきどき。
９時くらいには帰れるからって言われてて、近くのカフェでお茶しながら彼の連絡を待つ。
……味なんてしません。
ロイヤルミルクティにしたけど、ふつうのミルクティでも全然一緒だっただろうし、
なんなら水出されても気付かないね！ははん！
澄ました顔して自嘲してたら、ラインが来た。
『今帰ったよ、どこ？』
『カフェにいる、今から向かうね』
返信して、よし、と立ち上がる。右手と右足一緒に出そうとしてる、やっべ。
店から出ようとして、
「あの、お客様、お会計を」
とか言われた。
慌てすぎ。
「すすすす、すみません、ちょっと動揺してて、あわわわ」
お金を払って飛び出す。
ドキドキドキドキ。
……こんなんで一晩精神もつのか？
リアルに吐きそうになりながら、彼の部屋の、チャイムを押した。
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年7月31日 19時
