〇≠無の証明 Ⅰ (ページ8)

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なるほど。
櫻井さんの話が私の中にすんなり入ってくる。

相葉さんの人にも霊にも優しいってことはさよくわかったし、松本さんは人も霊も大した差はないと考えてることもわかった。

二宮さんはネットで調べるとか全く納得行かないけど除霊できる人みたいだし、
大野さんに至っては歩く除霊機だ。

よかった、櫻井さんが居なけりゃ私こんなとこで働けない。

「櫻井さん、宜しくおねがいします」

みんなが『なんで翔ちゃんだけに言うの！』みたいなテンションになってるけど、
私リアリストさんがいないと、きっと脳みそパンクしちゃうよ。

「わからないことあったらなんでも聞いて」
櫻井さんがにこやかに、言った。

「同じリアリストとしてなんのお仕事をすればよいのでしょうか」
「とりあえず、そのファイル見て」

櫻井さんが、ブルーのファイルを私にぽんと渡した。

「報告書」
「俺の苦肉の策を見ろ」

「詐欺罪……さっきの奴ですか？自分で転んだ？」
「それ以外書く方法ある？」
「転んで反省したことになってるんだ、自分では除霊できてたと思い込んでたってなんだか愚かというか」
「才能がなかったのそいつは」

二宮さんがブツブツ言ってる。

「で、才能があるやつがそれを引き継いだ、ということで」
松本さんがそう言ったら二宮さんが机をドンって叩いた。
なんだろう、普通の人なら怖い仕草なのにめちゃくちゃ可愛いのは何故だろう。

「引き継いでない！」
わんこがテーブルの上に両手乗せてるみたい。
手をぐーにして、むーって。

しかしさっきから係長がひっとことも声を発しないのは何故。
真剣な表情で目を瞑って、かんがえごと……？
違う、これは。

「智くん寝てるぅ！」
櫻井さんが、智くんー起きてー。智くぅーん。ってゆさゆさしてる。

「んぁ？昼飯はー蕎麦にする」
「あは！うん、蕎麦にしよっか？でもまだ仕事中だから起きてー」

櫻井さんのこの甘ーい声なんなんだ。

「仕方ねーよ、昨日霊に見られてて眠れないって人の家の前で夜中中張ってたんだもん」
松本さんが言う。

「でもカカリチョーが行ったら、元々いないのか今日は鳴りを潜めたのか見分け付かないの！」
相葉さんが楽しそうに笑う。

「今日はよく眠れましたとか言われて智くんだけ寝不足。一緒に車にいた相葉さんも寝てたしね」
櫻井さんがそう言ったら、大野さんがまたカクン、と船を漕いだ。