5 ページ30
「せっかく霊力持ってるのに。悪いことに使っちゃ、ダメだよ……」
「……じゃあ、犀東さんが悩まされてたアパートのポルターガイストについても私のせいだというの」
サヨリが、キッと相葉さんを睨み返した。
相葉さんが黙って首を振る。
「可哀想に」
「言い訳してみなさいよ」
松本さんが、ああ！って声を出す。
「それについては調べてきたよ、あのアパートに住民と、あのアパートに住んでたって人の話をきいたらすぐ分かった」
「……」
「あのアパートには曰くがあって、住んだ人の大半が具合悪くなるんだって」
「ほら、私にそんな力はありません」
勝ち誇ったように、サヨリが言う。
「俺には出来るよ？サヨリさん」
二宮さんが、鼻で笑った。
「三角に結界張って鬼門だけ開けとくの、霊は直進しかしないから中で出口を失う、そこで結界を閉めちゃうの。簡単じゃん。悪霊と同居してたら具合悪くなるよね」
「……」
「出来ないの？俺の女神様ならできるよ？あ、一緒の女神様だったよね？なんだっけ？狭依毘売命さん？」
サヨリが、血がにじむほど唇を噛みしめる。
「水神様だからね、水さえあればどこにでも出てきてくれるの。俺のこととっても気に入ってるみたいだから呼べば来てくれるよ、呼ぶ？」
「……」
「恥を知れ！身を弁えよ！」
「ひ……」
「って、いうよ、俺の弁天様ならね」
サヨリがガックリ首をうなだれた。
「認めます。私の守護神は弁財天さまではなく、なんの力もないんでしょう、きっと。ならポルターガイストは私のせいじゃない……」
「ああ、あなたのせいじゃない。それは証明してあげるよ、俺が」
松本さんが唇の端をふ、と上げて笑う。
「あのアパートなんだけどさ、人形が倒れたり、物が動いたり、ラップ音とかひどくてさ、住めなくなるんだって」
「……」
「ついた別名が幽霊アパート。住んでるだけで体がだるい、頭痛、吐き気、耳鳴り。霊障だと思うよね、俺以外はね」
松本さんが、ふ、とまた笑った。
「霊障じゃない、確実に。だって俺全く見えない。俺はね、サヨリさんの後ろに女が三人立ってるのとか見えてるの。けどあのアパートには金魚とか人の良さそうなおじいさんの霊しかいなくて」
松本さんが平然と言う。
サヨリが首を縮めた。
「……え、私に憑いて……！」
「うん。……でもさ！俺、今回の件で生霊は見えないんだってわかった！ありがとうサヨリさん！収穫！」
松本さんがクククと笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2365人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年7月15日 20時
