〇≠無の証明 Ⅰ (ページ25)

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犀東さんのお願いで、私も一緒にサヨリ様の元に行くことにした。
櫻井さん曰く、方瀬川さんと付き合うとよくないことがおこるから別れたい、仲裁をお願いしたい、ってことにしろ、と言って、アポを取る。

その時、どうしてもサヨリ様の話を聞きたいって男性が２人と私の友人が来るけどいいか、と言ったら、喜んでという返事が来た。

「商売のためだもんね、鴨が葱しょってくるわけだ」
二宮さんがふふふ、って笑う。

綺麗な事務所。
事務所の受付には、おとなしそうな女性がひとり座っている。

どこかに電話をかけてお待ちくださいといわれる。
たっぷり30分以上待たされて、秘書みたいな女が来た。
私を見て、サッと目をそらす。

……まずい、目をあわさないようにしなきゃ。

って声が聞こえた気がして、もう一度、女をよく見る。

「どこかでお会いしましたか？」
「初めてです」

初めてって、目も合わさずにキッパリ言った。
バカね。
目を合わせて、記憶を探るくらいの演技をしないとバレバレだ。
お前、あの喫茶店に居たな。

「人違いかしら、今日、どこかでお見かけしたような」
「……この世には似ている人が３人いるといいますし」
「……」
慌ててる。

それくらいにしておけ。
櫻井さんが私を見て、眼で言って来た。

……だって！
……どうするんだ、サヨリに逃げられるぞ。
……でも
……本丸を叩かなきゃ意味ないだろ

その通り。だけど。
注意深く女を観察する。

「失礼します。犀東さんが来られました」
「どうぞ、お入りになって」

全員で一瞬視線を交わして、中に入る。

「ようこそいらっしゃいました。迷える魂の浄化に来られたのですね」

女。
厚化粧をしていてかなり美人の部類にはいるけど、年齢は50歳位か。

張り付いた笑顔。
ああ、カラコン？黒目がちにしていて表情が上手く読み取れない。

櫻井さんが、にっこり微笑んだ。

「はじめまして。噂は犀東さんから聞いております。お会いできて光栄です」
私から見たら胡散臭さ100パーセントの、爽やかすぎる櫻井スーパースマイル攻撃。

女はバカみたいに、簡単に、堕ちた。
「こちらこそ。お役に立てればいいのですけど。ご相談ですか？そちらの方は」

私と二宮さんに目を動かした。

「犀東さんがいつも言ってるサヨリ様に会いたかったから嬉しいな、想像以上にお綺麗だし」

うげえ。
お世辞いえない。

私は黙って、頭だけ下げた。
これで勘弁しろ。
櫻井さんが、目でバカって言った。