80、約束して ページ10
「……ん？」
ああ、和、今の見てなかったんだ。
私とオトナの和の異様な雰囲気に、戸惑った顔をしてる。
「どした？A？」
「やべ。つい」
オトナの和がちょっと笑った。
「17歳だよね、犯罪じゃん俺！」
「……」
「まあいっか」
「……よくないよ！」
オトナの和が耳元で、和に聞こえないように、囁いた。
「二回目のキスが、ファーストキスにするって言ったよね」
「……っ！」
おでこをぺチン、と叩かれた。
「な……」
「ああ、そうだ。あとこれ」
「……」
私に、手紙をどうぞって、渡す。
「なに？」
「これ、玉手箱？玉手紙？」
「……え？」
「制服のスカートに入れといてね。絶対ね」
「なにこれ」
「約束して。この手紙、だれにも絶対見せないでね、Aの結婚式当日まで絶対、中見ちゃダメだよ、見たらおしまいだからね」
「……何が、おしまいなの？」
「絶対ね。約束して」
いつもと全然違う、真剣な表情。
「……」
「約束して。お願い」
「わかった」
「結婚式当日まで、見ちゃダメだよ」
和が、何回も何回も。
小さい子に言い聞かせるみたいに、何回も。
私に、手紙を渡して、笑った。
「……はあ。肩の荷が下りた」
和が、あは、って笑った。
「お幸せに」
「誰と？」
「天才外科医と、お幸せにね」
そういって、ぷくくって笑った。
「ちょっと！俺に何か言うことないの？」
和が、ちょっと怒った口調で、言う。
「なんもない」
「……」
「精々おれにぎゃふんって言わせてみてください」
和が、離れのみんなのいるところに、向かった。
「じゃあ、またね。どうせ腐れ縁。ずっとオトモダチだから、いまさら何かいうこともないんだけど。みんな、頑張って素敵なオトナになってください」
「ああ、うん」
「ではまた。Aと俺の、バカップルをよろしくね」
和がひらひらと手を振る。
「え、もう行くの？」
「織姫と会えたことだし、彦星は帰るね、っていうか今から仕事だし」
「何の仕事してるの？」
「……いろいろ？今日はね、ほんを読むのが仕事でー」
「……はい？」
「今から、宜しくおねがいしまーすって頭をひたすら下げるお仕事」
「なにそれ？」
「派遣社員みたいな？じゃあね、もう行かなきゃ」
意味不明すぎる。
っていうか、オトナの和にキスされちゃった。嘘でしょ。
帰っていく背中を見て、大きなため息が出た。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
