81、夢と現実 ページ11
その日の夜、みんなで花火をしながら、未来とか夢を語って、
思い思いに、遠くて近い未来を想う。
気付いたら、みんなで雑魚寝していて、
目が覚めたら、みんな５人がめちゃくちゃになって絡まって寝てて、
私一人だけ、離れたベッドで寝かされていた。
人の、気配。
かたん、と物音がした。
「……誰？」
眠い目をこすりながら、皆を確認する。
１，２，３，４，５。
全員いる。けど。あれ？
がさごそ。
人の、気配。
誰？
そおっと音のする方を見に行ってみると。
「……大野……さん」
「あ、おこした？ごめん」
オトナの大野くんが、こっちみて、ふにゃあって、笑った。
「もう帰ってきたの？」
「ちがう、行く前に最終打ち合わせがあって、そんとき、ちょっといろいろあって」
「……」
「今回、ちょっとごめんなさいしてー。代役立てた」
「どうしたの？」
「……怪我、しちゃって」
見たら、左足をちょっと、守ってるみたいな。
「お金出して見に来てくれるわけだし、ちゃんとできねーなら、おきゃくさんに申し訳ないでしょ」
悔しそうに、言った。
「……なにやってんの……」
「相手役のダンサーをかばって、ちょっと。足ヒビ入っちゃって。無理したら踊れなくなるよっていわれてー」
「……」
「くっそー……日本ならね、痛み止め打ってでも出るんだけど。……靴、入んない」
ほんとうに、悔しそうで何にもいえなくなった。
「……怪我……」
「好きな事を夢にするってことはー、それが現実になるってこと」
「うん」
「電車の運転手になりたいって言ってた子がさ、ほんとに運転手になれる確率ってどんくらい？」
「……」
「サッカー選手になりたいって言ってたやつもさ。信じられる？日本一難しい大学に入るほうが簡単なんて、信じられる？」
オトナの大野くんが、玄関に座ったまま、外を見る。
チチチチチ、と鳥の鳴き声。
ざわ、と風が庭を震わせた。
「夢はね、かなわないことのほうが多いんだ。でー、かなえたと思っても、思ってたのと違ったり、一瞬で、失ったりする」
大野くんの背中がさびしそうで、隣に座る。
「うん」
「夢が現実になったら、今度は……それが現実になっちゃうから、あたらしい夢を探す。そうやって、叶わないものを追っかけて、人は生きてる」
「うん」
「追いかけるのをやめたとき、そこから、死んでいくんだろうな、ちょっとずつ」
「そんな……」
「老いに、追いかけられる？」
あは、親父ギャグ、って笑った。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
