キノキミ。２の２、 ページ32
「……今のあなたにはわからないと思う」
「は？」
「色んな事があるの、ほんとに色んな事があった、両想いになってからの方が大変なのよ。だから……わたし」
「……」
「ごめんね、これ以上言えない」
ああ、伝わって。
あなた達の恋が報われますように。
「わたし、あなたのこと嫌い」
「うん」
「大嫌い！大人ぶっちゃって！わかったようなこと言って！あなたみたいな生き方はしない！」
「……うん」
「絶対、未来、変えてやるから！」
ふふ。
少し、笑っちゃったの、気づかれたかな。
「ねぇ、Aさん？」
愛おしい和の声。
私のこと、Aさん、だって。
A、か、お前とかコイツとか、雑な呼ばれ方しか聞いたことがないから新鮮でくすぐったい。
「俺が、Aを幸せにしたら、あなたはどうなっちゃうの？」
和の、『私』を心配してる声を聞いて、
胸がぎゅううって、なった。
あなたは横にいる私だけを心配すればいいの。
私のことなんか気にしなくていいのに。
「……わかんない、消えるんじゃない？」
「消えちゃうけど、いい？」
和。
私ね、私。
一緒に、未来に残りたかったよ。
二人きりの世界で、
誰もいない二人だけの世界で。
ひとりじめ。
わたしだけの、和。
誰も見ないで。
誰にも見られないで。
私だけがあなたを見つめるから、
あなたも私だけを見つめていて。
その願いはまだこの胸に、ずっと。
「……消して」
「……」
「和に、消してほしい。他の人じゃなくて、和が私を消して」
……あなたになら、いいのよ。
和になら、笑ってこの命を差し出してあげられる。
未来なんていらない。
「過去に戻らないで、こっちの世界でAのこと、幸せにしてもいい？」
うん、って何度も頷く。
ああ、そうだ。
この時はまだ、純粋に。
体の関係も何の約束もないのに、
ただ、好きだという想いだけで未来を捨てようとした。
この、和の覚悟を。
私は何度も捨てようとした。
こんなに、愛されてた。
幸せすぎて、息がつまる。
「好きだよ、和」
「……」
「初めてあった日からずっとずっと好きだった、ずっと、今でも」
「……」
「愛してるよ、和」
和が、部屋に入ってきて私を見下ろした。
「A……」
高校生の、和だ。
初めてあった時、目が離せなかった、
あの、和だ。
多分、あの時。
私の本能が気づいたんだ。
運命の人に出会ったことに。
この人だって。
この人が私の魂の片割れだって。
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やっち(プロフ) - おお。当たってました❗よしのさんの小説、色々違うお話を書かれてるので凄い尊敬します。もう感情移入して泣いてますよ。これからも色んなお話を楽しみにしています💕 (2021年10月4日 18時) (
レス) @page33 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
やっち(プロフ) - こんにちは。予想ですがカズは俳優になって主人公と結婚してると思います。絶対！ (2021年10月4日 16時) (レス) @page4 id: cc7865b69e (このIDを非表示/違反報告)
ちひろ - 高校生の時この作品に出会って、心動かされて24歳になってふいに夢に似たようなシーンが出てきて読み返しました。何度読み返しても素敵な作品。もう一度こんな気持ちにさせてくれてありがとうございます。 (2020年10月2日 21時) (レス) id: 7bf8bcbcd4 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - 大切な、前へ進むための力強いメッセージ。まさに、今のわたしに、また読み返してほしかったんです。将来、オトナになるとき、絶対また読んでほしいと当時おもっていました。消さないで置いていてください。そして改めてこんな面白くてステキな作品ありがとう (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
みゅう(プロフ) - キノキミ、No.1で好きな作品です。久しぶりに読み返せました、開放ありがとうございます(涙)そして二宮サン天才外科医役！(；▽；) (2020年2月19日 1時) (レス) id: 61dd42d003 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よしの
| 作者ホームページ：
作成日時：2015年6月14日 8時
