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ヒソッ
『フランシス、そんなにすごい点差だったの?』
「知らないの? 2位に50点以上の差をつけたのよ」
『……50点差』
ロイお兄様、僅差で負けたんだって話されていたのに、全然話と違うじゃない
前回大会で緑寮(グリーンハウス)を唯一追い詰めた〈美技の園〉
「「「深紅の狐寮!」」」
選手の銭湯を歩いてくるのは兄であるロイ、
『……演出が派手だわ』
どうして薔薇の花びらを散らす必要があるの?
「…私もそれに関しては何も言えん」
『次はどっちの寮が出て来るのかしら?』
…もうどっちでも良いから普通に登場して欲しい
扉を見つめるけれど人影も無ければ、足音すらしない
『…?』
ほかの2つの寮はどこ?
どうして出て来ないのだろうと思っていると急に大食堂に姿を現したのは
一芸に秀でた物が集うトリッキー集団〈群れる幻影〉
「「「紫黒の狼寮!」」」
驚いて思わずビクッとしたわたしを一瞥したフランシスが「普通にドアから入って来れんのか」と小さく文句を言っていた
残る寮はヴィンセントのいる青寮(ブルーハウス)のみ
どこから入ったのか真っ白な梟が数羽、頭上を舞い始めていた
ピー、ピー
天才的な頭脳を誇る〈進撃の窮鼠〉
「「「紺碧の梟寮!」」」
青寮の先頭を歩くのは監督生であるヴィンセント・ファントムハイヴ
目が合うとヴィンセントはその唇に薄い笑みを浮かべる
『今年も最下位は青寮(ブルーハウス)でしょうね』
わたしは絶対にこの賭けに勝たなくてはいけない
自分に言い聞かせるように呟いた言葉に喧噪に溶け消えていく
隣に並び立つフランシスだけが何も言えず視線を逸らした事にわたしは気付かない
フェアプレー精神の宣誓を終えた選手がそれぞれの家族の元へ向かう中で、ヴィンセントは迷う事なく、こちらに向かってくる
「1ヶ月ぶりかな?」
『…フランシスなら、向こうに知り合いを見つけて行ったわよ』
「妹(フラニー)と婚約者(A)を間違えたりしないよ」
ヴィンセントは流れるような動作でわたしの左手をとり、恭しくキスを落とす
「会えて嬉しいよ、A」
耳元に唇を寄せて囁いたと思ったら、「約束は忘れてないよね?」
『約束? 賭け(ゲーム)の間違いでしょう』
クスッ
「後夜祭で会うのが楽しみだよ、A」
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作者名:water lily | 作成日時:2019年1月20日 23時