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ページ4

スッ
ゆっくりとヴィンセントが長い脚を組み替える

「先代が死んだから必要ない?」

『そうじゃない、

スペンサーの跡取りである兄とあなた(ファントムハイヴの跡取り)はウェストンで学友だし、親交も深い。

わたし達の〈結婚〉という保険は要らないのでは?』


「しかし、口約束ほど信用できないものはない」


『ヴィンセント、

わたし……結婚は愛のためにしたいの』


クス
「貴族生まれの夢見る箱入り娘が言いそうな言葉だ」


『わたしは、




あなた達のゲームの駒になりたくないのよ!』


「心外だな、

俺はきみをゲームの駒だななんて思った事はないよ」


『あなたにとっては自分以外の人間は全員が駒に見えているのでしょう?』

「…A」

『あなたは常に冷静なんじゃない、

他人に興味がないだけよ!』



「愛してる、A」

『っ、急に何を』

「君の言う通りであれば何故俺がこの婚約を拒まなかったと思う?

ゲームであれば、きみ以上にもっと使える駒を手元に置きたいと思うはずだろう?」


『ヴィンセント』


「はっきり言ってしまえば、ファントムハイヴはスペンサーより上だ、

この結婚にスペンサーは大きな利を得るが、ファントムハイヴが得るのは君〈A〉だけ


…まぁ誰もが羨む美しい妻を得たという優越感と嫉妬ぐらいは付随してくるだろうけどね」


『……わたしはトロフィーワイフ(形だけの妻)になる気はないわ』


「そうだろうね、トロフィーにするには君は賢過ぎる」

『ヴィンセント、あなたが何を言いたいのかわたしには分からない』

「物事はもっと単純で明快だよ、俺がきみを愛している、だから君を妻に望んだ」

『…そんなの有り得ない』


ヴィンセントに自分が愛されていると思った事など一度としてない


ウェストンに入ってからだって一度として手紙をもらった事なんてないし、

新しいドレスを仕立てた時も綺麗だと褒めてくれた事もない


目の前にいる彼はいつもと同じように自分をからかっているだけ、

黙っていても自分に寄って来るような他の女と違って、彼〈ヴィンセント〉に迎合しない事が面白くないだけなのだ


騙されてはいけない


ここで彼の言葉を信じて『イエス』と返事をすれば、その途端に彼は美しい笑みと共にわたしを切り捨てるに決まってる

婚約者と知らずに育っていた時はまだ良かった、

でも彼が夫になるかもしれないと思った時に最初に感じたのは愛ではなかった

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作者名:water lily | 作成日時:2019年1月20日 23時

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